第十三節 熱病

 ねぐらに漸く帰った時には、既に夜も更けていて、若頭わかがしは先に寝ていた。天眼てんがんは彼がどうやって眠りについたかを視たので、安心してねぐらに戻り、焦ること無く蘭姫あららぎひめに案内して貰い、二人で若頭わかがしの寝床に入った。一方、柳和やなぎわねぐらに帰ってもまだ、天眼てんがんめくらと言われたことや、頭領に唾を吐かれた怒りが治まらず、馬を駈ってくると言って、出て行ってしまった。自分の目線ほどもある高さの鞍に、柳和やなぎわは手も使わず、羽根で浮かび上がるように、文字通り飛び乗って、言ってしまったのだ。夜も遅く、如何に柳和やなぎわが盗賊団の一員と言っても、彼が前線に立つことはまず無いらしい。天眼てんがんの護衛と言っても、いつも呼び寄せた動物を嗾けるだけで、武器は持たないのだそうだ。真槍しんそうは、そんな風に自然や言葉も知性も無い動物を操るなんて、と、笑いそうになったが、すぐに、あの美しい踊りは野獣をも魅了し、心をとろとろに溶かして考えの無い奴隷にしてしまうだろう、と、思い至った。柳和やなぎわなら出来ると、なんとなくそう思う。柳和やなぎわ本人と話すことが出来なかったので、真槍しんそうは女達や一緒に行った仲間に柳和やなぎわの話題を振っていたが、すぐに疲れが出てきて寝入ってしまった。


 翌、岩室に光の熱が広がる頃まで寝ていた真槍しんそうは、腹を蹴り転がされて飛び起きた。すわ敵襲か、と、頭の所においていた槍をとろうとしたが、槍が無かった。しまったと思ったが、槍は壁際に丁寧に添って、邪魔にならないように置かれていた。誰かうっかり者が踏んづけたのか、と、真槍しんそうが腹をさすっていると、今度は頭を踏まれた。流石に何か騒々しいことが起こっていると考えるに至り、真槍しんそうは身を起こした。すぐ傍で泣きながら瓶を担いで走る少女に歩幅を合わせ、何が起こったのか問うと、少女は醜く歪んだ歯を剥き出しにして叫んだ。

「頭領が熱病に罹られたのよ!!!」


 大急ぎで食堂であり、頭領の寝床も兼ねた場所へ行くと、いつも頭領が寝ている辺りに、人がわんさかと集まっていた。手拭いを変える者、薬をつけようとする者、泣いているだけの子供もいる。本当に巨大な『家族』が、家長である頭領の痛みを思って集っていた。

 その中心には、やはり天眼てんがんと、手を握って励ましている蘭姫あららぎひめ、そしてそのすぐ傍に柳和やなぎわが立っていた。普段の、お頭様とうさま、お頭様とうさま、と、まとわりついているのが嘘のように、その距離は遠い。

天眼てんがんさま! 頭領はどうされたのですか?」

 人混みをかき分け、左の二の腕を擦っている天眼てんがんの傍によると、天眼てんがんは答えた。

「昨日、私達に難癖をつけた若者がいた時、蝿に噛まれただろう? どうやらその蝿が、熱病を持っていたらしいんだ。一晩経って、気付いた時はこの有様だよ。…音声おんじょう、しっかりするんだ、音声おんじょう。」

 天眼てんがんの声は、頭領の身体と同じように震えている。否、頭領の身体の震えが、天眼てんがんを揺らしているのだ。天眼てんがんの掌の中には、小指の爪ほども無い小さな膨らみがあり、そこを小さな瘡蓋が覆っていた。恐らく蝿に噛まれたところだ。だがそこは、何度も仕置きをされた奴隷の背中のように、全体的に赤く腫れ上がり、皮膚が伸びててかてかと光っている。膿が溜まっているのだ。天眼てんがんが命じると、一人の女が、小刀の先を埋め、深く小さな傷をつける。はじけ飛ぶように、真っ白な膿と透明な体液、それに少しの血が混じって出て行く。真槍しんそうにはそれが、とてつもなく質の悪い、面皰にきびの塊に見えた。手拭いて膿を拭き取っても、腕を揉みながら傷に寄せていくと、どろどろと新しい膿と血が出てくる。肌の下で溜まって、突っ張っているのだ。

「アバ、アバ…。」

「………。」

 蘭姫あららぎひめが泣きながら頬を撫でる。だが柳和やなぎわは動かなかった。寧ろ悔しそうに、何故か蘭姫あららぎひめを睨み付けている。

「あららぎ…、あららぎ、おまえの、おまえのははうえはどうした…。どこにいる。」

「私の? アバ、私の母は、私を産んだ時に死んだと以前―――。」

蘭姫あららぎひめ、ちょっと黙ってくれ。」

 意外なことに、天眼てんがんがそれを止めた。天眼てんがんは、彼女の母親が、産後どこに居たか理解しているのだ。そして、彼女が今どこに居るかも、理解している。

音声おんじょう、『彼女』に会いたいのか? こんな熱病、君なら払いのけられるはずだ。『彼女』に会いに行きたいなら、自力で迎えに行け! 『彼女』を愛しているのなら、こんな所で死ぬな、音声おんじょう!」

 小さく、頭領の唇が動く。声にならない声で、愛した、否、今でも愛することしか出来ない女を想い、瀕死の淵で戦っているのだ。蘭姫あららぎひめが、一等強く手を握ると、両手の中の指が動いて伸びる。握る力もないのだろう。いつが山場なのか、それを聞きたくても聞くことが出来ない。それは諦めているからではない。見限っているからでもない。そこに奇跡を成した人物が、二人もいるからだ。神に愛され、特別な術を与えられた者が二人もいるからだ。真槍しんそうですら、その二つの奇跡を見たのだ。

やり方は分からないが、どうにかしてくれる、天眼てんがんさまならどうにかしてくれる。

仲間達の心は一つになって、嘆いている天眼てんがんに奇跡を求めていた。真槍しんそうもその内の一人だった。だが、天眼てんがんの顔つきが険しく、腕を摩る指先が震えていることに気付いたのもまた、真槍しんそうだった。

「皆さん、心配なのは分かるけど、ここは天眼てんがんさまが集中できるように、一度離れましょう。天眼てんがんさまが集中出来るように、他のことにも気を配って―――。」

「何だい新入り! 冷たいこと言いやがって!」

 痛い。殴られた。頭領を心配する恐怖心が暴走しそうになった時、意外なことに柳和やなぎわがそれを止めた。助け起こしこそしなかったが、ダンダン、と、足を鳴らすと、皆静まりかえった。

「おじ様、ぼくがその女性を迎えに行きます。何処にいらっしゃるのか教えて下さい。」

柳和やなぎわ…。でも、君が行くにはあまりに危険だ。君の美貌が失われたら―――。」

 この期に及んで、何故美醜の話が出たのか、不思議に思った人間は何人もいた。真槍しんそうだけは、彼女が今居るところを思うと、美醜どころか命も危ういことを理解していた。

「おじ様は、未来は視えないのでしょう? その女性を連れてくることでお頭様とうさまが慰められるのなら、例え黄泉にいても噛み付いて引きずり出して連れてきます。ぼくはいつだってお頭様とうさまの一番でいたいんです。お願いです、行かせて下さい。」

「………。でも、―――いや、分かった。その代わり、護衛と雑用として、真槍しんそうを連れて行きなさい。今までのように爪楊枝と馬鹿にしないで、私だと思って連れて行きなさい。約束できるかい?」

「はい。」

 あまりにもあっさりと言うので、恐らく嘘だと思った。そんなことよりも、この取り乱している今なら、柳和やなぎわの人間関係の輪の中に、自分が入り込めるのではないか、自分の憧憬を知ってもらえるのでは無いか、と、真槍しんそうは不謹慎にもほくそ笑んだ。

「宜しい。では行きなさい。彼女は瑠璃虎尾るりとらのおの花を持っている。場所は―――。」

 告げられた場所が、らい病人が集められ、打ち捨てられる谷であることに気付いた者は殆どいなかった。柳和やなぎわ蘭姫あららぎひめだけがそれを理解し、若頭わかがしはなんとなくそこがただの場所ではないことを察していた。

「アニィ、そんな危険そうなところなら、あっしが―――。」

「駄目だ。お前はここに居ろ。音声おんじょうの一番初めの息子なんだ。傍に居ないで、何故初子と言える。柳和やなぎわが一番相応しい。」

「…あい。」

 不服と言うより、若頭わかがしは少ししょんぼりとして、頭領の汗を拭う手拭いを瓶の中に突っ込みに行く。

「………真槍しんそう。」

「は、はい!」

 柳和やなぎわが複雑そうに言うので、思わず返事が裏返った。

「今まですまなかったとは言わない。でもこの旅でお前を蔑むこともしないし言わない。だから、一緒にお頭様とうさまの大切な人を迎えに行くのを手伝ってほしい。」

 頼む、と、柳和やなぎわが頭を下げるので、慌てて真槍しんそう柳和やなぎわに触れて顔を上げさせた。

「そんなことを仰らないで下さい。貴方の為に働けることはぼくの誉れです。行きましょう、彼女は確かにそこにいるのですから。」

 しかし、真槍しんそうが抱擁しても、柳和やなぎわは抱擁を返さず、横着したのか、頬を真槍しんそうの脳天にすりつけるだけだった。柳和やなぎわはふわふわとした衣服で体型ごまかしていたらしく、抱きしめるととても細い身体で、本当に護らなければ、この柳のような身体は千々に折れて切れてしまうだろう、と、思った。


 馬を牽いてこい、というので、真槍しんそう天眼てんがんと乗る為の大きな馬を引いてくると、柳和やなぎわはすでに自分の馬に跨がっていた。鳩のように白く輝く毛並みの、黒真珠のように大きく悲しげな瞳が印象的な、美しい馬だった。その馬は真槍しんそうが牽いてきた馬よりも更に大きく、その馬の腹の下を潜るのに、真槍しんそうが頭を下げる必要が無いくらいに足が長かった。当然、馬の足と殆ど同じくらいの身長の柳和やなぎわが、よじ登ることなど出来ないだろうに、一体どうやって乗ったのか、柳和やなぎわは遅いと眼で言っている。その態度が、この馬は借りてきたものでは無く、れっきとした柳和やなぎわだけの馬であるということを示していた。

「なんだ、気が利くじゃないか。」

「え?」

「ぼくの馬はぼくしか乗れない。お頭様とうさまの大切な人を乗せるには、お前の馬じゃなきゃならない。もし一人用の小さい馬を牽いてきたら、後ろ足で蹴ってるところだ。」

 結果的には良かった。本当はそこまで気が回って居らず、ただ癖で牽いてきただけだったのだが。冗談ではなく、あの馬に蹴られたら身体が真っ二つに折れて、皮膚が裂けて筋肉も裂ける気がする。

「おじ様の言っていた場所はらいの谷だ。少しでも早くお迎えして、健康なままの彼女を連れてこないと。行くぞ、真槍しんそう。ぼくにしっかり着いてこい。」

柳和やなぎわさん、道分かるんですか?」

「ぼくを誰だと思っている? 天下のお頭様とうさまの左腕だぞ? この国に、この馬の行けない所なんて、無いのさ!」

 そう言って、柳和やなぎわの馬は勢いよく走り出した。慌てて真槍しんそうも、馬に鞭を入れる。しかし柳和やなぎわは、相変わらず脚の力だけで跨がり、鞭も入れていないのに物凄い速さで走る。同時に走り出さなかったが故の差が、少しずつ、だが確実に開いていく。急げ急げ、と、とにかく鞭を入れるが、あまりにも入れすぎて、馬はやり返すように激しく走った。舌を何度も噛みながら、馬に息切れする暇も与えず走り続けた。


 馬が持たない、と、漸く叫べたのは、真槍しんそうの馬がバテ始めてふらふらと安定しなくなってからだった。柳和やなぎわは心底嫌そうな顔をしたが、すぐに馬を止めて引き返し、自分の革袋から水を出して、真槍しんそうの馬に与えて良いと言った。喉が潤うと、馬は物凄い勢いで涎を撒き散らしながら、野の草花、果ては木の皮まで剥がして食べ、餓えを満たした。馬は今にも眠ってしまいそうなくらいに疲れていたし、真槍しんそうも激しい上下運動でくたくただったが、柳和やなぎわは休憩している間も忙しなく動き回り、早く真槍しんそうとその馬が首を上げないかと苛々しながら待っていた。それでも以前のように嫌味を言わず、黙っている辺り、出発前の言葉は本当だったらしい。

「やなぎわさんは、つかれないんですか…」

「こんな一大事に、疲れただのケツが痛いだの気にしていられないよ。それに、お父様から賜ったあの馬は、最高に乗り心地がいいんだ。」

「………頭領ではなく?」

「そう、お父様。…ぼくを拾って下さった次の日、この馬がねぐらの入り口に繋がれてたんだ。それに、この馬は鞍を付けられないから、ぼく以外は乗ることさえ出来ない。お頭様とうさまは、この馬はぼくがあの一団にやってきたお祝いに、天に坐すぼくらのお父様が下さったんだって言ったんだよ。あの時から、ぼくの身長と脚の長さが同じくらいあってね。ぼくがこれ以上成長すれば、多分この馬も成長するんだと思う。」

「これ以上でっかくなるんですか!? どっひぇー!」

「ぼくが大きくならないなら、このままさ。」

 これがねえ、と、真槍しんそうはじっくりと馬を見上げる。これ以上大きくなったら、それこそ神の乗り物じゃないか、と思う。もういいか、と、柳和やなぎわが眼で訴えてくるので、自分の馬を見ると、こちらの馬がまだがつがつと草を貪っているのを指さし、首を振った。柳和やなぎわが溜息を吐く。

「仕方ない。お前も疲れたようだし、今日はここで野宿にしよう。ぼくはテントを張るつもりはないから、お前が組み立ててくれ。ついでに火を炊いておいてくれ。ぼくはやらないから。」

「はい、喜んで。」

 荷物の中からテキパキと道具をとりだし、火を炊いて、柳和やなぎわの細い肩に上着を掛ける。柳和やなぎわは何も言わなかったが、暖かいらしく、ほうと溜息を吐いた。今まで何を言っても罵声で返すか、無視を決め込んでいただけに、真槍しんそうは舞い上がり、そいやそいやとテントを張る。柳和やなぎわが暇になって星で絵を描くまでもなく、テントが出来上がり、真槍しんそう柳和やなぎわを中へ入れた。その時気付いた。このテントの中に、真槍しんそうは入れない。いくら真槍しんそうが小さくても、二人は無理がある。しかし柳和やなぎわはそんなことはお構いなしに、お休み、と、満足げに言って、テントの中で寝入ってしまった。乗り心地が良いと言ったって、所詮馬は馬だ。長く乗っていれば足腰に疲れが溜まる。ましてや柳和やなぎわは両脚だけで、あの巨大な馬を乗りこなしているのだ。疲れないわけがない。

 そんな馬に比べれば、真槍しんそうの馬など疲れたというにはあまりに小さい。仕方が無いか、と、真槍しんそうはテントのすぐ隣に寝転がり、目を閉じた。


 頬を撫でる風が柔らかい。音色が自分の胸を啄んで、汗を吸って重たくなった衣と肌の隙間に指が滑り込む。整えられた薄い爪が、産毛の根をひっかいて、それにぴくりと動いた腰を、柔らかく抱きしめる。揮発した果実の香りがつんと鼻の奥を突き、うっそりと目を開くと、七色にきらめく貝殻の飾りで頭を覆った柳和やなぎわが、微笑む狼のような瞳で見下ろしていた。

「や、やなぎわ、さん?」

「ふふふ………。」

 楽しそうに微笑むその姿はあまりにも艶めかしく、見ているだけで太陽を見続けたかのような眩暈がする。薄い唇の隙間から、ぽってりとした舌が覗き、仰向けになっている自分の、衣服の上を這い回った。すん、すん、と、時々鼻から呼吸している音がする。胸元の汗の匂いから、鳩尾、臍と匂いを手繰り寄せていって、鼻先が布を掻き分けていく。目的のものを見つけると、からかうように息を吹きかけた。何をしようとしているのか気づき、慌てて身を起こそうとして、激しい頭痛と明滅に思わず元に戻って頭を抑える。あまりにも怠くて、動けない。今にも憧憬の相手と同衾するかもしれないという焦りや恐れや期待で、若い真槍しんそうの胸は小さく押し潰れ、中身が全身の皮膚の下を滑り駆け回る。ねえ、と、柳和やなぎわが腹の下で声をかけた。

 ねえ、どうしよう?

 どうしようって、どうしよう。どうにでもなりそうだしどうとでもなりそうだし、どうにかなってしまいそうでどうしたらいいか分からない。

 ぐるぐる考えている内に、熱いものが触れる。冷たい外気と綯い交ぜになって、ぼんやりと腫れぼったい目元が湿り気を帯びていく。

「このままでもいいよ?」

「………。」

「ん?」

「………。そのまま、くちで………。」

「は?」

 柳和やなぎわの声色が変わる。うじうじしているのが苛立っているのだろうか。ええい、儘よ、と、真槍しんそうは腹の底から声を出した。

「そのままお口でぼくの早漏おちんぽ舐め舐めしてくださいッ!」

「ぶっ殺すぞテメェ!!!」


 ごしゃっ!


 鼻から鼻血が吹き出す。たった今までの官能的で熱っぽい雰囲気は何処へやら、自分の頬は世間よりも冷たい朝焼けの風が吹き付けており、何故か目の前には人の足首が見える。その足はどうやら、自分の鼻を踏みつけているらしい。視線を上へ送っていくと、外套を羽織った人影になった。足が退けられ、顔を真っ赤にして今にも泣き出しそうな柳和やなぎわが、豚といなご豆を奪い合う乞食を見るような目で見てくる。

「はれ? や、やなぎわ、はん?」

「朝っぱらから精が出るな、よしよし。一回死ね。」

 ………これは、もしかして、もしかしなくとも。

「………え、夢?」

「どんな夢見てたのかなんて火を見るより明らかだ。死ね。」

「え、どこから?」

「最初ッからだ、この豚野郎!」

 もう一度踵落としが来そうだったので、慌てて転がる。ごり、と、股間が地面に擦れ、真槍しんそうは悲鳴を上げて縮こまった。柳和やなぎわは顔に小便をかけられても犬を追い返せない浮浪者を見るような目で見下ろしながら、向けられた背中をがすがすと蹴る。

「このぼくに向かって欲情しない男がいたら確かにそりゃ不能だ、それは認めてやる。でもお前のような何の得手もない男が、ぼくに奉仕を求めるだなんて烏滸がましいにも程があるぜ、このクソ童貞ッ! そんな悩み無くなるように、今すぐ処置してやる。さっさとお前の芋虫を出せ。」

「いだだだだあ! ご、ゴメンナサイ柳和やなぎわさん、ちょっとだけ! ちょっとだけ待って下さい、処理してきますから! 本当、わざとじゃ無いんですって!」

「ワザとだったらお前の首は今頃拉げてるわ! とっとと出して追いつけ! この早漏!」

「え? ちょ、柳和やなぎわさん? え、何で怒ってるんですか? 止めて! 置いてかないでーっ! 柳和やなぎわさん、柳和やなぎわさーん!!」

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