クリスマス・ソング

西川笑里

君と僕のメロディ

 私たちはいつから話もしなくなったんだろう。


 俺たちはいつから話もしなくなったんだろう。


 ⌘


「わあ、おっきいねえ」

 小学一年生の頃の私たちは毎年一緒に二人でクリスマスツリーを見上げながら、大人になってもずっと仲良くしようと約束していたんだ。


——それが。


 いったいいつから私たちは話もしなくなったんだろう。喧嘩をしたわけでもない。学校ですれ違っても何も喋らなくなってしまっていた。



 受験シーズンを迎えて、私はいつもラジオを近くに置いて勉強をしていた。

 ラジオは今年もクリスマスの音楽の特集をしている。この季節の定番で、DJの優しい語りの合間に流れる山下達郎、ユーミン、ワム、マライヤ、ジョンレノン。

 私は一緒に思わず口ずさんでいる。そしてクリスマスの季節になると、小さい頃見上げていたツリーと彼、まーくんのことを毎年思い出していた。


——さあ、今年のクリスマス特集の最後にリクエストに応えちゃおう。


 DJの声がラジオから流れる。


——ええっと、何なに? まーくんからメロディへ。僕はずっと君を愛してる。

おやおや熱烈なリクエストだね。


 私は思わずラジオのボリュームを上げていた。


——この曲はタイトルがクリスマスらしくない曲だけどね、小さい頃のクリスマスの思い出を歌った曲だって知ってたかい。


 私の名前、「音」。幼なじみのまーくんだけが、私をメロディと呼んでいたんだ。


——曲は「FIRST OF MAY」。日本語のタイトルは「若葉のころ」。ビージーズの美しいメロディに悶絶しな! メロディちゃん、聞いてたら拍手!


 そして私は手が痛くなるほど拍手していたんだ。


 



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