第4話

 フォンティーヌ公爵邸には近くに森があった。その森の中にシオンとクーデリカだけの秘密の隠れ家が存在していた。と言っても、2人がそう言ってるだけで家が本当にある訳ではないが……

3日後にはシオンがレッドドラゴンの討伐遠征に行かなければいけないと知ったクーデリカは、久しぶりに2人で秘密の隠れ家でお茶をしようと誘い、シオンはもちろんそれを受けた。

 しかし、長い付き合いもあって、シオンはクーデリカがお茶会の最中無理に笑ってるのに気づいた。だから、シオンは尋ねてみる事にした。


「ねぇ、何か悩み事があるの?」


シオンの言葉にクーデリカは驚いて目を見開いたが、すぐに微苦笑を浮かべ


「シオンには分かっちゃうか……うん……でも、ごめんね。これは、私でなんとかしないといけない問題だから……でも、いざという時はシオンに頼らせてもらうから……ね?」


クーデリカは意外にも頑なな性格をしている。だから、これ以上問いただしても口を割る事はないとシオンは思った。シオンはそれでも自分に何か出来る事がないかと考えて……


「……そうだ!今から王都の街を散策しよう!」


「えっ!?」


「前からクーも王都の街並みを見て回りたいって言ってたじゃない!ほら!そうと分かれば善は急げだよ!」


「ちょっ!?えっ!?シオン!?待って!?確かに行きたいとは言ってたけど……!!?」


こうして、シオンはクーデリカを強引に連れて王都散策をした。初めのうちは王太子妃だとバレないようにビクビクしていたクーデリカだったが、2人で一緒にまわってる内に、そんな事も忘れて楽しそうに笑っていたので、シオンはこの時本当に連れて来て良かったと思った。まさか、その3日後に断罪されて処刑されるなんて思うはずもなく…………





「確認がとれた。確かに、その日シオンが誰かと王都の街並みを散策していたという証言があった。ただ、相手が全身を覆うローブにフードを被っていたから顔は見てないそうだが……」


 マグダエル家三男、フェリス・マグダエルはこの場にいる者にそう告げた。彼はシオンの兄の1人で、魔法騎士団の諜報部隊長である。先程も風属性の魔法を駆使して情報を得てきたのである。


「これで分かったでしょう!?すぐにこの事実を王城に突きつけてやりましょう!!」


「待て!?シオン!落ち着け!!」


 シオンが今にも王城へ殴り込みにいきそうなのを止めたのは、マグダエル家の次男グリフィス・マグダエルだ。彼は王城騎士団所属の騎士で、主な任務が王城の警備である為余計にシオンを止めたのである。


「これが落ち着いていられますか!?グリフィス兄!?」


「いや、グリフィスの言う通りだ。少し落ち着け。シオン」


シオンにそう言葉をかけたのは、マグダエル家の長男アルフィス・マグダエルである。彼はアルフォンス王国総括騎士団の副団長を務ている。ちなみに、団長は父のアレクセイである。


「クーデリカ様は無実の証言が出来るのにそれをしなかった。それは何故だと思う?」


「えっ?何故って……」


「シオン。お前を庇う為だ」


「えっ!?」


アルフィスの言葉にシオンは驚愕のあまりその場で固まってしまった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

元魔物討伐隊の女騎士は討伐ギルドに所属して親友の娘を育てます 風間 シンヤ @kazamasinya

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ