第3話

 1人の少女が聖女として選ばれた事が発表されてからは国中大騒ぎとなった。聖女となったシャルルは教会所属になり、シャルルには何人かの歳が近い王侯貴族達が教育係として就いた。

 シャルルは聖女で地位的には王族に近い。が、彼女は平民として育った少女である為、貴族の教養などは当然身につけてなどいなかった。それは流石にマズイと判断され、何人かの王侯貴族が彼女の教育係となったのである。歳が近い者が選ばれた理由はその方が彼女も色々話しかけやすいのではという配慮からだった。


 その教育係の1人にエルリック・アルフォンス王太子もいた。


 そして、シャルルが聖女として選ばれてから1年以上経ったある日、シャルルは様々な嫌がらせのような事をされていた。彼女の教養の為に用意された教材の本やノートが破られているのは日時茶飯事で、彼女の靴がゴミ箱に捨てられていたり、彼女用に仕立てられたドレスが破られた事もあった。


 これらシャルルの嫌がらせを行った犯人として真っ先に名前があがったのがクーデリカだった。

 王太子エルリックがシャルルの教育係に選ばれてからというもの、エルリックは明らかにシャルルにばかり構い、クーデリカの事を蔑ろにしていた。故に、嫉妬からの犯行ではないかと疑われたのだ。おまけに、聖女がいる教会は高位の貴族か教会に所属する者しか入れない。そういう意味からもクーデリカは疑いの対象となったのである。

 しかし、これはあくまで動機があって条件が揃ってるというだけであって、彼女がやったという証拠にはならない。クーデリカ本人もキッパリ否定している為、彼女をこの罪で断罪するのは不可能だった。


 だが、シオンがレッド・ドラゴン討伐遠征へと向かう3日前の日に事件は起きた。シャルルは何者かに階段から突き飛ばされたのである。幸い、すぐに教会の者が倒れてるシャルルを介抱し、治癒魔法をかけたおかげで無事に助かった。しかし、目を覚ました彼女は、「犯人の顔を見てないか?」と問われた時に驚きの言葉を口にしたのである。


「あの……その……とても言いづらいのですが……あの去って行く後ろ姿……美しい銀髪と狼の耳に尻尾……クーデリカ様だったと思います……」


このシャルルの言葉がきっかけとなり、クーデリカは聖女殺害未遂の容疑で裁かれる事になった。やはり、クーデリカはハッキリと否定の言葉を口にしたが、シャルルの証言がある以上言い逃れ無用という事で、エルリックの婚姻関係は解消。更に、クーデリカの両親も関与の疑いをかけられ、両親共に国の尊き存在聖女へ害なした罪で死罪という判決が下された。これらの出来事は全てシオンがレッドドラゴンの討伐任務をしている間に執行された……




「……違う!クーは!クーは無罪だッ!!!」


「シオン……気持ちは分かるが聖女様の証言が……」


「その証言はデタラメだ!クーは!その日!私と一緒に街の散策をしていた!!」


『何だって……!?』


シオンの言葉に、アレクセイやシオンの兄達も揃って驚きの声をあげた。


 

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