第6話 お昼
あれから二時間、、、いや、三時間が経過したのでしょうか?時刻は正午を回っています。やはり本を読むというのは、時間を忘れてしまうものなのでしょう。あなたとメグは集中しているのか、時間が経っているのを忘れているかのようです。
「はぁ~、、、分からない、、、」
おや?集中力が切れたみたいですね。
一度切れてしまったら、もう集中は続きませんね。
「なあ、助手くん、、、君は何かわかったかい?まぁ分かるもなにも、記憶は無いし、この『世界』がどこで分岐したのか分からないんじゃあ、お手上げだよねえ、、、」
……
「まぁ、私も正確には分からないからなぁ」
おやおや、2人してお手上げのようですね。
「、、、」
「腹が減ってきたな。もう12時過ぎか、、、」
メグは立ち上がります。
「助手くん!飯だ!昼食をとりにいこう!」
……?
「お金の心配なら不要だ。」
「フフフ、、、まぁ着いてきたまえ」
メグは何故か自信に道溢れています。なぜなんでしょう?また、可哀想な少女を演じるのでしょか?
あなたは少し不安を覚えつつ、着いていきます。
「さぁ、着いたぞ!」
そこは公園?いや、広場...でしょうか。先ほどの図書館までの道よりは人通りの多いところにあるみたいです。
「なんでこの場所を知っているだって...?ふふん、さっき図書館で地図を見ておいたのさ。」
……
「さあ!誉めるがいい。君はいい人間を上司に持ったものだね。」
「よしっ、準備をするぞ!とにかく人の注目を集めるんだ!」
...なにを言っているのでしょうか?
あなたはわけもわからないまま、大きな声で近くの人を呼び込みます。
「おぉ、順調に視線がこっちに集まっているね。そしたら、私の出番だ。」
「助手くん、もう集客はいいよ。」
集客ですか、、、
メグはポーチから何かを取り出します。
「はー、、、、~~~♪」
それは楽器、オカリナのようです。綺麗な音色に、集まった人達は聞き入っているようです。
その音色は観客を魅了し、その音と人だかりによって、瞬く間に人が集まります。
あぁ、それは確かに美しい。あなたも聞きなれない音に耳を傾けます。
~~~♪
...........
.......
...
…5分ほどでしょうか。数十分にも感じられた時間がメグの言葉によって終わりを告げます。
~♪.....
「、、、ありがとうございました。」
沢山の拍手が彼女を包みます、、、
ーーーーーーー
「いやー、結構稼がせてもらったね。これならしばらくご飯には困らないだろう」
「さぁ、昼食をとろう。もうお腹がペコペコだ。」
...
「あれは私の特技のひとつだとも。ああやってよくお金を稼いで旅、、、じゃなくて、『観察』の資金にしてたわけさ。」
「まぁ、私はこんなもんじゃないぞ?あと三回も進化を残しているんだからね。」
「……………」
「いや、今言ったことは忘れてくれ。君には記憶が無いもんな。わかるわけがない。」
墓穴を掘りましたね。忘れている人にそのネタを使ってしまったのが原因でしょう。あなたにはわからない、、、忘れていることなのですから。
「早くいい店を見つけて昼食を済ませるぞ、、、」
ーーーーー
昼食を終えたあなたたちは図書館に戻ってきました。作業の再開です、、、とその前に何か話があるみたいですね。
「助手くん、さっきの観客の様子と、昼食に食べたものでわかったことがいくつかある。」
「一つ、この『世界』、いや、少なくともこの地域ではオカリナは珍しいものであること。誰もこの楽器、正確にはオカリナの音を知っている素振りを見せなかった。」
「二つ、先ほど昼食を食べた店、そこで使われている食材の全てが、この国原産のものだった。偶然ではないだろう。」
「三つ、これは推測だが、携帯機器があまり普及していない。今まで見てきた人で携帯電話を持っている者はいなかった。それに腕時計をしているものもな。機械的な文明が発展していないとも思ったが、車は走っているし、図書館にはパソコンがあった。なにか別の理由があるんだろう。」
「そしてここは2103年、未来の『世界』だ。未来であるにも関わらず、君のいた世界のひと昔前の風景を思い出させることが多いようだ。まるで数百、数十年のブランクがあったように。」
「私は歴史のどこかにその原因があると推測した。例えば鎖国。例えば戦争。例えば政治。なにかしら要因があると思った。だが、長いブランクができるほどの歴史的原因は見つけられなかった。」
……
「あぁ、話が長かったね、すまない。大丈夫、あと少しだ。」
ーーーーー
メグは『観察者』としての役割をしっかりとこなしているようですね。あなたがいるおかげで、少し考察が捗っているようです。なぜかって?...考えというのは口に出すことでまとまりやすくなるんですよ。そういうことです。
観察する者 ~あなたと少女の物語~ りこ @Lycorit
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