【LAST BATTLE】
現実世界にはリセットボタンが実装されていないので、自力でなんとかするしかない
S級バグ vs ミラクルアイディア①
窓から差し込む太陽の木漏れ日が、私に朝の到来を告げる。
まどろんだ意識のなかで、ベッドの上でうぞうぞと身体を身悶えさせて、疲れ切っている身体になんとか
……わ、すごい顔……、でも、この顔なら子供に見られないかも――
ちょっと背伸びした気分になった私……、『
「……お母さん、オハヨー」
「おはよう……、って、アンタ、ひどい顔してるわね……、ちゃんと寝てるの?」」
「ん……、昨日は、三時間くらい?」
「ほとんど寝てないじゃない……、毎日毎日遅くまで、たまには休めないの……?」
手を止めた母が、信じられないという顔でこっちを見ている。ドカッと椅子に腰をかけた私は、明後日の方向に目を向けながら寝ぼけ眼で返事を返す。
「――むー、お母さん、私が働いてなかったときは、『いつまで寝てるのーっ』、って怒ってたくせに――」
「『極端』だ、って言ってるの……、アンタが仕事頑張ってるのはエラいと思うけど……、身体を壊しちゃったら、なんにもならないわよ?」
「……うん、今作ってるゲームがリリースした後、ちょっと長めのお休みもらえるみたいだから、それまでは、ガンバル……」
「…………そう、ともあれ、無理はせずにね――」
そこまで言うと、諦めたように母は口をつぐみ、朝食の準備を再開させた。目の前で湯気を立てているコーンポタージュを両手で抱えて遠慮がちに啜ると、暖かいスープが全身を巡っていく。脳がグルグルと活動を始めて、私は今日やらなきゃいけない作業を頭の中でボーッと組み立てていた。
「――いってきま~す」
トントンッ、と
「――暑っ……、は、早くクーラーが利いてる会社にたどり着かなきゃ……、死んじゃう――」
ゾンビのような足取りで、テコテコと人通りの少ない一本道を歩いていた私は、ふと、ある違和感を覚える。なにか、いつもと違うような、何かが足りないような――
――財布、忘れてるでしょ、ズボンのポケットに入ってないから、いつもと感覚が違うんじゃない?――
「――あ、そうだ。取りに戻らなきゃ……」
くるっと
……あれっ? 今――――
『久しぶり』に聴こえたアイツの声に、ハッとなる。
ドアノブに手をかけながら、しばらくボーッと呆けていた私だったが、ガチャッとドアを開け放ち、「財布忘れた~」とのん気な声を上げた。
――その後、アイツ――、『浩介』の声が聴こえることは、私の人生で、一度も無かった。
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