第5話幸せの青い鳥は、きっとすぐそばに

何かの記念日に行くことが多かったレストランで、優斗を待った。ジャズが流れる、イタリアン。

「あの男と別れる気になったか。お前にはオレが一番あってる、間違いないよ」

 彼の話を聞きつつ、話すべき内容をまとめる。これからこと。

 4種のチーズのピザ、肉の包み焼きなどを食べた。ここの料理はいつも美味しい。デザートとコーヒーを楽しむ時間には、自分で話すべきこと考えていた。

「優斗」

「なんだ? 新たな記念日になにかほしいのか?」

「あなたとはつきあえない」

 優斗の顔は、初めて見た顔だった。私が優斗の考えに反したことを言ったことがなかったから。今まで、彼のいいなりだったから。

「お前にはおれじゃなきゃダメだろ。何言ってんだよ」

 少しいらだっているのが分かる。コーヒーカップを持った手が、たばこを吸いたがってる。

「私には、大事な人ができたの」

「ありのままの私を大事にしてくれて、支えてくれて、私と生きることを楽しみにしてくれる人。そんな人と、出会えたの」

 立ち上がって会計をした優斗が車に向かっていく、帰ってしまう前に伝えなきゃ。

「優斗と会えてよかった。これはウソじゃない。あなたと過ごした日々は忘れない。でも、もうあなたとでは幸せになれないから。私、自分の幸せを考えていくから。だから、だから…あなたも幸せになって」

 目が潤んできて、どんどん前を見ることが難しくなる。こんなに自分の意見を彼にぶつけたことがなかったか。文彦さんと会って、するようになったこと。自分の意見を言うこと。 

「いいよ、もう」

「オレが勝手で悪かったよ。加奈子も、幸せになれよ」

 タクシー代が手に押し込められ、車で彼は去っていった。こころなしか、泣いているように見えた。 

 


チャペルの音がなり、花嫁が顔を出す。誓いのキスなどをすませ、みんなの前で微笑むところは、いつもの先輩と変わらない。普段と違うのは、幾多ものドラマを手がける脚本家と腕をくんでいるとこ。式場で一番きれいな先輩が、

「三好さんもドレス似合いそうなのに。本当にいいの? 式あげなくて」

「先輩、ドレス似合ってますよ。あと今は三好じゃなく岡田です」

 先輩の結婚式。先輩はとてもきれい。私が結婚式をしなかったのは、私の旦那さま、文彦さんは意外と恥ずかしがり屋で、みんなの前でお披露目をしたくなかったから。あれから愛美とも仲直りをして、優斗とは連絡をとっていない。

 結婚、人生それが全てじゃない。私は家族が作りたかった。だから結婚した。長い間一緒にいた人、自分をよく知っている人と結婚したからといって幸せになるとは限らない。

私と共に未来を築く人と、幸せを探していきたい。幸せの青い鳥は、意外と近くにいるはずだから。       

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私らしく生きるためにー人を愛することー 笠原美雨 @_shirousai

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