第2話そもそもの事の始まり:天使って実在したんですか?

 世界征服ってそもそもなんですか?


 何で僕こんな状況になっているんだっけ?僕はあれだよ?学校でカースト最底辺のいじめられっ子ナードだよ?

 そんな人間がいきなり世界征服とか意味不明すぎる。

 状況を何とか整理しようとも、短い期間で色々なことが起きすぎたせいで、頭が余計に混乱する。

 こういう時は、一から思い出していくのが一番だ。

さりとて、赤ん坊の時から思い出を回想なんてしたら、日が暮れてしまう。


 この複雑的かつ怪奇な状況を整理するには少なくとも数時間は前に遡らなければいけないだろう。


ーーー


 本日は晴天なり本日は晴天なり。

 お日柄もよく、こんなアナウンスが流れても特に疑問にも思わないだろう。

 そんな清廉潔白というか染みひとつない心を示すような、雲1つない見事な青空なわけである。


 まぁ、そんな有難い青空だろうが、いじめられてフルボッコにされた僕からしたらバカヤローって感じなんですけどね。

 ていうか、身体中痣だらけでクッソ痛いんですけど。これ高校生だけど労災的なのおりる?はい、おりないですね。

 ほんと、バカヤロー。

 何が楽しくてそんな晴れ晴れとしてんだ。いっそ隕石でも降っちまえ。


「はい?」


 とか思ってたら本当に降ってきた。

 まぁ、きたのは隕石とかじゃなくて人なんだけどさ。しかも羽根つき。


 お、親方―!!





ーーー


 親方と叫んだところで、ここは屋上。僕以外誰もいない。そもそも学校に親方なんて存在しない。


 くだらない思考を垂れ流したところで、天使っぽいのはゆっくりと空から下降し続けている。

 ていうか、天使って実在したんだね。純白の翼を生やした女性?が目の先に現れた時点で疑いようもない。僕はヤク中でもないので、頭もラリってない。正常だ。これSNSとかにアップすればバズるかな。そしたら、一躍有名人だなあ。


 あ、やべ。

 あれ、こっち落ちて来るな。受け止めた方がいいよね。


 ふわり


 そんな感触だった。

 やや小柄ではあるが一般的な成人女性ぐらいの体躯はある。羽根も余計にあるのだから、普通そんな感触では済まない筈だ。

 さりとて彼女は羽毛のように軽く、息を吹けば消し飛んでしまうのではないかと思うほど儚い。


 彼女はゆっくりと手を伸ばして僕の頬に触れた。


「あぁ、なんて酷い目。そして歪なまでに壊れてしまった心。まるでロミオのよう……」


 いきなり触れた優しさと気遣いに不覚にも泣きそうになった。虐められてると人の温もり的なのに弱くなりますね……

 さりとて、その感慨に浸り続けることは出来なかった。

 よくよく見たら彼女は酷い怪我を負っている。腹部が血に染まっていた。それなのに、彼女は今にも死にそうなぐらい酷い怪我であるにもかかわらず、自己のことより僕を労るように呟く。

  腰まで伸びた透き通るような黄金色の髪。その隙間から覗く虚ろな瞳は奥に仄かな温かさが垣間見える。


 そして、事切れるように彼女の手はコツンと地面に落ちた。


「え? お、おーい! だ、大丈夫?」


 は?

 え?いきなり空から降ってきたと思ったら死んだ?

 しかも、消えた……スウーッと消えてしまった。


「な、何起こってんの……?」


 思わず呆然としてしまう。

 意味がわからない。天使が空から降ってきたと思ったら、今度は死んで、しかも消えた?

 これ本当に現実?

 古典的だけど頬をツネってみるか?あ、いてえ……やっぱり現実だ。全てが唐突過ぎて人?が死んだというのに、何の感慨も湧いてこない。



 『レベルアップしました』


 は?

 今度は何さ。

 レベルアップ?もういい加減にしてくれ。



 『初めてのエネミーを倒したことでステータスを獲得。スキル【解説ナビゲーション】獲得』

 『最適化。本人が使用する機器で最も使用頻度が高いものでステータス確認及びその他機能が使用可能』

 『モンスターが出現してから一時間以内に討伐をしたため称号【決断者】を獲得』


 なんだよこれ。頭に鳴り響いてうるさいな。慣れない感覚に凄い戸惑うわ。

何と言えばいいか。説明しづらいけど、脳が痒い。そんな変な感覚としか言いようがない。

 最適化ってなんだ?そもそもステータスってなんだよ。本当にRPGなのかな?

 使用頻度の高い機器と言われるとスマホぐらいしか思いつかない。スマホに電源を入れると見慣れないアプリがあった。



 アプリを開くと『ようこそ』と文字がポップアップした。なんだいかにもみたいなこのポップアップは。 

 もうちょっと装飾つけるとかして盛り上げて欲しいなぁ。個人的には『HELLOWORLD』みたくお洒落な感じにして欲しい。


 スマホ画面には簡素的な男のアバターが映っている。制服着てるし、自分で言うのもあれだけど根暗っぽい雰囲気を出してるから、僕のアバターってことかな。アプリにすら根暗扱い受ける僕って一体……


 アバターの横にはいくつか文字が記載されていた。



 ステータス

 所持品

 スキル習得

 ガチャ

 ショップ

 掲示板


 え?ガチャ?ガチャ引けるの?






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

不遇職:詐欺師による4畳半のセーフティールームから始まる世界征服 灰灰灰(カイケ・ハイ)※旧ザキ、ユウ @zakiiso09

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ