最終話
「皇子ができる迄……」
「さようで、お一人お出来になりますれば安泰。碧雅のみならず、我が一族が総力をあげてご成人、高御座迄お護り致します。ただ、後宮のいろいろを鑑みれば、平等に機会をお与えになるが、宜しゅうございましょう。老婆心ながらでございますが……」
今上帝の物思いな風情に
「そなた様は、大青龍をお抱きにございます。あれの次兄の様に、抱ける物を待たずともよろしいのですから、碧雅がお相手をできぬ間に御励みくださいませ」
と、それは見惚れる程の、美しい微笑みを浮かべて言われた。
「どうしても我が子には……」
「……なりませぬ。特にそなた様は、大青龍を御抱きのお方、御子様との争いを御望みでなくば、御諦めくださいませ」
そう言われると、慈しみの笑みと変わられる。
「碧雅は、果報者にございます。愛するそなた様に、さほどに思われて……ゆえに神力が強うなりましょう……さすれば、そなた様をお護り致す力が強うなりまする……どうぞ生涯、可愛がってやってくださいませ」
今上帝が微かに俯く顔容を持ち上げられて、それは愛おしげに微笑まれると、スゥーとお姿を御消しになられた。
と同時に今上帝は、御帳台の上で御瞳を御開けになられた。
夢ではない……確かにかのお方はお越しになられ、婿と御認めくだされたのだ……そして言われた事には、背く事が許されぬ事を悟った。
翌日今上帝は、最愛なる女御碧雅からも言われ、数人の女御に子授けをする事となり、かの昔の伝説のお妃様の御代と同じ事が起こった。
そして側近伊織の憂いを取り除いた。
翌年寵妃藤壺の女御様は、玉の様な皇女様をご誕生となり、その年の内に待望の皇子様が立て続けにご誕生になられた。
二人の親王様と三人の内親王様を頂き、その後今上帝が他の后妃に寵愛を御向けになられる事はなかった。
此処
かのお方はお一人の親王様をご誕生になさり、当時の皇后様が親王様をご誕生と共に身を引かれて、上皇様と後院に赴かれた。
そして当時の皇后様がご誕生の皇太子様は、聖代視される天子となられ、皇后様お一人に愛を御捧げになられ、青龍を抱ける天子を御誕生なされた。
そして大青龍を御抱きの今上帝様は、今もお一人の女御様を御寵愛なされる。
今やそれは見事な女体を誇る、藤壺の女御様だ……。
……龍を抱きし天子・瑞獣碧雅恋愛編……終……
長々とお読みくださり、ありがとうございました。
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