第195話

「そなた様のその厄介なる一途さは、我が夫の血でございましょうや?」


 またまたオホホ……と笑われる。


「……して、碧雅は、充分ご満足頂けましょうや?」


「それ、それは充分過ぎる程で……」


「……ならば宜しゅうございました」


 その美しい顔容を、綻ばせてお笑いになる。

 その美しさは例えようもなく、それこそ神仏のだ。

 妖術云々ではなく、そのに囚われぬ者など存在しないだろう。


「……さて、私が参りましたは、碧雅には、余りいろいろ申し渡しておりませず……申した処で……の処がございますゆえ……」


「あー確かに……」


 思わずポロリと、何時も思っている可愛い部分を口にしてしまった。


「お気に召され婿となりましたならば、に言い渡しますより、直々に申した方が間違いがございませぬ」


 またまた今上帝は、同意してしまう。

 我が子ゆえか女神ゆえか、本当によく解っておられる。


「此度めでたく懐妊致しましたが、皇子が誕生致した場合、我が鸞一族は高貴な身分ならば、跡目は継げぬ掟がございます。それは、大きなる力を保持する瑞獣の血を持つ御子様が、覇王となりかねぬからにございます。かつて私も親王を頂きましたが、決して跡目を継ぐ事はなき様にと言い渡しました。ゆえにその様にお計らいを……」


「そ、それでは、最愛なる碧雅の子を、天子と致せぬのですか?」


「さようにございます。つまりそなた様には、碧雅が子を成しておる間に、他の后妃に御子様を授けて頂かねばなりませぬ」


「それは……」


 今上帝は声を張って断りたかった。しかし


「私もかつての主上には、そうして頂きました。ゆえに碧雅には、私がとくとくと言い聞かせて参ります。我が一族は情が深い分、独占欲が強うございますゆえ……もはやご存知の事と存じますが?」


 と言われ、今上帝は思い当たる処がメチャあって、さすがに頷かれる。


「しかしながら、碧雅がおりますれば、皇子はお一人でも難無く成人致しますゆえ、お覚悟をお決めくださいませ」

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