第193話

「ゆえに御子様を?」


「かの妃はかなりのものよ。今生の乱世を決して許さぬ……そしてさすが大神の女神だ……力が違う。ただの神ではない。碧雅を誕生させて、今上帝に当てがった……つまり誤りなどあり得ぬ……」


「……ならば碧雅は?」


「未だ固い蕾の大輪よ……今上帝の傍におらば、じきに大輪の花を咲かせる。そして今上帝を捕らえて、邪なる大望など起こさせぬ算段よ……今生において、青龍を封じ込めるは碧雅への愛だ。は、碧雅以外に気が行かぬ……大青龍は、生涯眠って過ごす。眠っておらば、今上帝がこれから得る力と、愛情と碧雅から得る力で充分よ。何せ今上帝の愛が深ければ、碧雅の力は強大だからな……さすが天が誕生さする大神の、寵愛を得るものだ……」


「……ならば、如何致したら青龍は目覚めますので?」


 銀鱗は仲睦まじく、大池の宴を見つめる新婚さんを見つめて聞いた。


の憤りと悲しみ……そしての力が危機となった時よ。以前の中宮の時に青龍は目覚めかけたが、中宮が全てを吐露して謝罪したゆえ大事とならなんだ。あれがあのままであらば、は目覚めておったやもしれぬが、さすが碧雅が上手くやった」


「ならば碧雅がおらば、今上帝は安らかに今生を過ごせますな?」


「そなた……今上帝が可愛いか?」


わたくしが模しますお方の、忘れ形見でございますよ?我が子と思いお護り致しますわ」


「さほどに我が妻殿を惑わす女人ならば、一度逢うてみたかったものよ……」


「長きに渡り、私をほっぽっておられた報いにございますよ」


 銀鱗は色合いの良い袖口を、口元に持って行って笑った。

 だから金鱗は、銀鱗を抱き寄せて一緒に笑った。

 今上帝はその後共に戻った寝所に、そのまま碧雅を召した。

 とにかく今上帝は、碧雅と共に寝たい。

 その痩躯な躰が愛おしい。

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