第183話

 熱い息を吐き始めていた碧雅は、今上帝が動きを御止めになられて聞いたので、瞳を開けて視線を合わせた。


「……お母君様が申されるに、付いておる物を取るは何かと厄介ゆえ、必要に応じて付けよと申されたに、如何したら此処が豊かに付くのであろうか?」


 この期に及んでも貧相な胸に拘る碧雅に、苦笑しかお浮かべ様もない。

 もはや本当に、どうでもいい事だ。

 女であろうと男であろうと……。

 瑞獣であろうと人間であろうと……。

 恋い焦がれてしまったのだから、もはやどちらでもいい。

 どちらでもいいが、どちらかを選べるならば、今上帝の立場を鑑みて、子を孕める女体がいいだけだ。今上帝が誕生した役目を考えれば……という事で、それが叶わなくても別段困りはしない。いざとなれば全てを捨てられる程に、もはや囚われの身となっている。


「私は結局、いたいけな童女を汚すのだな……」


 今上帝は自嘲される。

 もはやこの感情を、抑える事はおできになられない。

 童女を云々などといった文言で片付くはずはなく、確かに面前の雛が童女又は赤子なら未だしも、見た目は大人にしか見えず、女人特有の胸の膨らみが無いだけの存在で、ならば少年であると思えば童女では無いし、いたいけな少女でもない。

 そして今上帝は願ったものの、雛が躰に変化が無いと言ったので、少年相手のいろいろ迄伊織に調べさせておいでだ。

 もはやどうでもいいのだ……瑞獣の雛が自分の物にさえなれば……。




「待て今上帝、これは噂以上の物がある」


 今上帝は思いをやっと、お果たしになられると思った矢先に、組み敷いている雛にマッタをかけられた。


「見たり聞いたりと、のは大違いである」


 今上帝の下でもがいて、渋面を作って言った。


「身を離せ」


「えっ?」


「身を離せ。これは堪え兼ねる」


「な、何を申すか?望んだはそなたであろう?」


「……である……が無理だ。む・り!!」


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