第174話
ポフ……。
抱き合ったまま、寝所の御帳台の上に……。
「雛よ……オマセさんであるな……」
今上帝は、再び碧雅を抱き包めて笑った。
「うっ……そなたが寝所と申したではないか?」
「……だが、こことは言うておらぬぞ……」
「はぁ?釣殿で寝かせたと、グチグチ申したではないか」
碧雅は今上帝の腕を振り払って、身を起こして言った。
「ほんに……昨夜そなたが酔い潰れて、抱けば熱いくらいであったがゆえ良かったが……大池の上であらば凍え死んでしまうぞ」
「はぁ?真冬の雪が降るならともかく、頃合いも良い時期であるから、凍え死になど致さぬわ」
「私はあの様な所では、うたた寝すらした事がない身であるぞ……それをそなたは、ポポンと連れて行ったはよいが、そのまま酔い潰れてしまうとは……」
今上帝は大きく溜め息を吐きながら、御首を横に振られるが、微かに口元が緩んでいるのだが、しくじりを犯した当人は、多少の自責の念もあるから、一向に気がつかない。
「そ、それはそなたが大好きな女体に、鼻の下を伸ばしておるゆえ……」
「はぁ?大好きな女体?何の事だ?」
とか御言いになりながら、目が笑っている。
「金鱗の妻の、それは見事な女体に、メロメロであったではないか」
「……それは、確かにかのお方は美しくあられたが……」
「ほら見よ。そなたはそれはそれは、嬉しそうであった……」
「う、嬉しくもなろう?我が御母君様の事を、お話し下されたのだぞ?嬉しくない筈がなかろう?」
「……とか申して………」
ゴニョゴニョと、碧雅は不服気に何かを言っているが判然と言わない。
「全く……何をゴニョゴニョと……らしからぬ……」
今上帝も身を起こして、碧雅を覗き込んで言った。
「そなたは、大好きな中宮の女体を求めておるのだ。それが実に腹立たしい」
碧雅が真顔で言ったので、今上帝は呆れて碧雅を凝視した。
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