第175話

「雛よ、如何してその様な事となるのだ?」


 今上帝の方が、面喰らわれて聞かれた。


「如何して……と申しても、そうであろう?」


「中宮は長きに渡り、思い続けた女人ものであるが、今は違う……」


「……とか申してもそうでは無いのだ……そなたは、に似た女体を……」


「女体女体と申すな……」


 今上帝は碧雅を抱きしめると、御唇を耳元に付けて言われる。


「真に今は違うのだ……」


 甘く囁く様に言われては、雛が耳を赤くする。


「そなただけだ……」


 そう言われると今上帝は、暫く碧雅に顔を埋めてきつくお抱きになられる。

 すると碧雅は、今上帝の顔を覗き込んで


「……ならば証を見せよ」


 と今上帝を御帳台に押しやった。


「証とな?」


 今上帝が、雛を仰ぎ見て聞かれる。


「証である」


 雛は、至極真顔を作って答える。


「……この白々と明け行く今か?」


 今上帝が笑顔で言われるから、碧雅は、不服気に身を引いた。


「今上帝、そなた根っからの助平よな」


「……ならば雛は、オマセさんであるな?」


「はぁ?そなたはよくそう申すが、……そういう事ではないのか?我が身が痩躯なる雛ゆえ、ゆえにそなたはそう申すのだ。好みの女体であらば、そなたはその様な事を申さずにだなぁ……」


 雛はそれはムキになって、身を起こしながら抗議する。


「この様な事を申さずに?如何致すと申すのだ?」


「もう、むしゃぶりついてだなぁ……」


「ほう?むしゃぶりついて如何致すと?」


 今上帝は笑みを浮かべられながら、楽し気に追い詰めていかれる。


「そ、それは……幾度と無くそなたは、いろいろと致しておるであろう?」


にか?」


「おう!そうそう……」


 言い淀んだ雛は、今上帝の言葉に同調する。


「……そなたはに、目が無いのだ。その瞬間に理性を失くすのだ……」


 雛には余りの言われ様の今上帝だが、唖然とするのも構い無しに言われる。確かに豊満な女体は好きだが、何もここまで言われる程ではないし、そこまでの偏った嗜好を持っているのではなくて、ただ一般の男としての希望を述べ、好む方を言ったまでで、確かに雛が可愛く面白くあったので、揶揄って誇張した事は認めるが、さしもの今上帝も、雛が何時迄もこうして根に持つとは思っていなくて、解っていたならば揶揄ったりしなかったのに、と最近では少し辟易としておられる。










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