第169話
「法皇はあくまでも、今上帝を苦しめるが為に語ったのだ……己が抱けぬ龍を抱きし天子だからだ……」
金鱗は精達の踊りを一瞥して、浴びる様に酒を飲む碧雅を見つめる。
「……それゆえだけに、何故我が子を苦しめる?」
「最愛なる
「青龍をか?」
「……もしかして、抱いていると思うておったのやもしれぬ……」
「何故に?」
「やはり青龍に選ばれるは、我が身が特別と思えるのであろう……だが碧雅よ、あれを気を付けねばならぬぞ」
金鱗に言われて、碧雅が再び盃を置いた。
「あれは心を落ち着けておればよいが、憤りが激しかったり悲しみが強いと、それを紛らわせたり落ち着かせる為に、力を欲する様になる。ならば青龍は活き活きと目覚め手遅れとなりかねぬ……」
「……手遅れ?」
「あれ程の青龍は厄介だぞ。ゆえに母御は、そなたをあれに当てごうたのだ」
「……金鱗意味が解せぬ」
見入る碧雅を、金鱗も真顔で見つめる。
「そなたの存在が、あれを落ち着かせる。そして青龍をも封じられる……朱が弟帝の子の青龍を、抑えたのは知っておろう?」
「いや。私は知らぬ……」
「さようか?鸞は青龍を抑える事が、可能と聞いたが……私もよくは知らぬ……だが朱の存在が弟帝を助けたは確かだ……ゆえに私は、母御がそなたを、今上帝に当てごうたのだと思うたのだが……そなた真に何も聞いておらぬのか?」
「お母君様は、何も教えては下さらなんだ。ただ今上帝の元に参れと……今上帝の意のままに致せと……ゆえに、意のままに致さばよいと思うておったのだ。しかるにアヤツは……」
雛は銀鱗と仲睦まじい感じの今上帝を見て、再び瓶子を手に取り盃に並々と注いで、再びグビグビと盃を空けていく。
「碧雅よ……早く大人としてもらえ」
金鱗は碧雅の肩を、ポンポンと叩いて立ち上がった。
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