第168話

「その頃には閻魔の代わりを務めたり、龍神の代わりを務めたり、いろいろと代役を務めるが好きなのだ。……で、今は麒麟となっておるゆえ、碧雅に神を許す事ができなかった。まっ、妃が請いに参れば直ぐ様頂けたろうに、妃も別に必要と致さぬかったのであろう。ゆえに、雌雄はそなたの嗜好に合わせる様に、どちらともなる様にしている様だ。この意味は解るか?」


 今上帝は、余りにも途方も無い話しに首を横に振る。


「そなたの嗜好に合わせ、雌雄を決めさせる……つまり、そなたに碧雅を捧げるという事だ。男が好きなら男で、女が好きなら女で……そなたの意に合うた方に合わせてでも、そなたに碧雅をという事だ……神の母御がそこまで致して捧げるのだ、有り難く頂くが高々の人間というものよ。眉月は我らの世界では、瑞獣鸞の眉に例えられる。有り難くその盃の眉ごと頂いてしまうのだな」


「いや……しかし雛は……」


「いいか?そなたが判然と決めてやらねば、碧雅は長きに渡る生涯を、雌雄がつかぬまま痩躯のまま終える事となるぞ?」


「いやしかし……雛は……」


「……とか苦悩の様子を浮かべておるが、俺の言う事は渡りに船であろう?あれ程に可憐で純粋なものは存在致さぬぞ。それもやり手の妃がに、そうやって育てたのだ。ならば、どんな人間にも可愛いがられるからな……は大輪の花だぞ。蕾の内に手折れ、と母御が寄越したのだ、意にそうてこそ婿の役目というものよ。いいか?妃は神だ。神は道理の無い事は、悪戯には致さぬ……」


 金鱗はほくそ笑むと立ち上がって、今上帝の肩に手を置いてポンポンと軽く叩いた。


「碧雅よ、あの眉月はそなたの眉そのままだな?」


「おっ?そうか?今上帝もそう思うか?」


 碧雅が可憐な笑みを浮かべて、今上帝を見つめる。

 赤い月に照らされて、あどけない表情は艶を放って魅力した。

 今上帝は角度が変わった眉月の浮かぶ盃を口に付け、一息に洒落た味わいの竜宮城の酒を飲み干した。

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