第167話
「何時も淡い色合いを好まれ、笑顔がお美しく……一番お美しかったのは、そなた様をお抱きになられ、乳をお与えの時でしたわ……死の間際まで乳をお与えで、そして青龍の力で
今上帝が盃を手に、銀鱗を直視する。
「天寿とは、天が授けし寿命にございます。かのお方はそなた様を現世に誕生さすが為に、天から授けられし天女でございますよ……役を終えれば、天に召されるは道理にございます。決して法皇に愛されるが為に、遣わされたものでは無いのです……夢夢お忘れなきよう……」
盃に酒を注ぎ込むと、少し位置が移動した眉月が、角度を変えて浮かんだ。特に今宵の月は細くて、実に美しい眉だ。
「まぁ、飲め……」
金鱗は盃を注視する今上帝に、それは馴れ馴れしく身を寄せて言った。
「眉ごと全て飲み込め」
声を潜めて今上帝に囁くので、今上帝は視線を金鱗に向けた。
「あれを、雛と思うておる様だが……」
銀鱗が碧雅に瓶子を傾けると、碧雅は手を振って手酌で注ぎ入れて笑っている。
「あれは未だ若いが、雛ではないぞ」
今上帝は、視線を逸らせずに食い入る。
「あの妃が、その様なヘマをするわけが無い。かつてあれの兄達は、同性でありながら愛し合ったゆえ、さしもの妃も面食らった。さすがに弟帝が兄に、恋愛感情を抱くとは読めなかったのだ。その教訓を得て、妃は碧雅の雌雄を決めかねた。兄の朱は大神から神を許されたものゆえ、弟が望めば女神ともなれたが、碧雅は大神から許しを得られなかった。何故なら、大神は麒麟と化して役を肩代わり致しておるからだ。大神はかなり変わりものでな。余りの堅物ゆえ、太古の昔神々から煙たがられ、幽閉の憂き目に遭うたりしておる」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます