第123話

 それはつまり朱明は、これからどうなるのか予想もつかない事に、お妃様のご希望が通る様に加担……否々、尽力を尽くして行くという事だろうか?

 ……か?ではない……だ。

 朱明はこれから、己の全てをかけて尽力を尽くしていくの

 自分が正二位の子孫であり、の字をお許し頂いた人間である事を証明する為に……。



 翌朝参内すると朱明は、今上帝のお側に侍る瑞獣様に、舎人を通して蔵人に会いたい旨を伝えてもらった。

 瑞獣様がチョチョイとされた時に、陰陽寮の朱明の縁者となっているので、そこのところは連絡を取りやすい。

 昼近くになって瑞獣様は、陰陽寮にやって来て朱明を呼んだ。


「これは……」


 朱明は月見で一杯……の時同様に、他国の奈良時代だかその前の時代だかに流行ったという、大国から伝わったとされる双髻の髪型をした、それは愛らしい瑞獣様に見惚れた。それに白丁しらばり姿ですらも可憐である。


「陰陽師如何致した?」


「実は伊織様に、御目通り頂きたいのです」


「伊織か?解った会う様に申し伝える」


「宜しくお願い致します」


「おう。任せておけ……なんなら今上帝に、直に会わせてやるぞ」


「お、おやめください……その様な事を致さば、何を言われる事やら……」


 朱明は陰陽寮の中を探る様に、視線を送って小声で言った。


「全く、そなたはまこと小心者であるな……」


「瑞獣様。私はあなた様の様な、物凄い力を持ってはおりませんから……」


 瑞獣様はふーんと言うと、鼻で笑う様にして陰陽寮を去って行った。

 その後ろ姿を見送りながら、今上帝が伊織に屋敷に置く様に命ぜられた理由を解した。

 あれはどう見ても愛らしい少年にしか見えず、この国では決して異質ではない、少年愛好者を虜とするは必定だ。

 そして朱明は思っていたよりも早く、伊織から屋敷へ訪問する様に指示された。

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