第122話
「あれを見れるは、我らの様に特殊なもの達だけで、下級のものは気配を察する事しかできはしない。ゆえにそなた達人間は、今上帝の様に青龍を抱きし者への畏敬とか恐怖は感じられても、その正体は知らずに終えるのだ……だが、子を救うならば、今上帝に理解してもらわねばならない、そしてその子に全てを捨てさせるのだ……」
「……………」
「神仏はそれを中宮に諭しておるが、たぶん中宮はそれを理解致せぬだろう。ならばどう致すか?今上帝にその子を、決して我が子と認めさせぬ事だ……誰の子でもよいのだ、中宮の子でよいのだ、ただその子に力を与えねばよいだけよ」
「……つまり……決して皇太子と致さぬ事を、宣言して頂くのですか?」
「皇太子だけではない……皇位を与えぬとさするのだ……」
「……その様な事……」
朱明は金鱗を凝視する。
「……そう臣下の前で宣言するだけで、宮中の者達は全てを知る……」
「しかしながらそうした場合、法皇様が黙ってはおられませぬ……」
「さすれば、法皇が標的となる……子は喰われはしない」
「……なぜ?神仏までお出ましになられ、御子様を?」
「第一に、この平安の世を護っておるは瑞獣だけではない。第二に、何千か何百年毎に天の大神は、子孫を側に置く為に呼び戻すのだが、その折りは無垢なる内に母胎より還すのだ。此度その子を、今上帝を苦しめる事となるあれと致したのだ。よいか?太古の昔に譲り受けた大地の大神には、天の大神も気を使うておるという事よ。碧雅を送り込んだは、あの大神の寵愛する瑞獣の妃だ、つまりは我が子を与える程の男に、生涯の苦痛を与えるを避けるという事だ……」
金鱗は朱明に、意味深い笑みを浮かべた。
「つまり碧雅は、今上帝の今生の伴侶となる……という事だ。いいかそれにそなたは関わりを持たせて頂いたのだ……意味は解るな?」
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