第121話

 朱明は釣殿に、ヘタレて座り込んだ。


「陰陽師。そなたまことに情けない奴だな」


 胸糞悪そうに池を見つめながら、金鱗がこぼす。


「す、すみません……」


 青龍が中宮様の……想像しただけで、デリケートな朱明は気分が悪くなる。


「そんな事では、調伏など無理だろう?」


「霊的なものはどうにか……」


「霊的?そんなの、調伏とは言わんだろう?」


「さようでございますか?私はそれがやっとというか…….」


 朱明の姿に金鱗は呆れる視線を送ってくるから、朱明はちょっと居たたまれなくもある。


「まっ、そんなそなたであるので、ここはちょっと俺からそなたに、情報を与えてやったのだから、とくと踏ん張ってもらわねばな……」


「え?」


 青い顔容をそのまま金鱗に向けて、朱明は不安な表情を浮かべる。


「よいか?俺の話した事を、碧雅に伝えよ」


「碧雅?」


「……なんだ?瑞獣の名を知らなんだのか?」


 またまた金鱗は呆れ顔を作る。


「いえ……伺った事があるような?しかしながら主上様は、雛と仰せでございますが……」


「ほう?この際であるから、そちらの点数稼ぎも致すとするか……」


「は?」


「そなた、瑞獣以外に、知る者はおらぬのか?」


「知る者?」


「今上帝のだ……」


「あー」


 と合点したとしても、雲の上の主上様に近しい者など知りようもない。

 なんといっても、陰陽寮の陰陽師の中でもペエペエの朱明である。

 あちらは雲の上のお方で……ん?んんん???

 朱明はただ一人、思い当たる殿上人の顔を浮かべた。


「思い当たる者が存在致したか?……ならばその者に今の話しを致し、今上帝にその旨を伝えさせよ。いいか?ただその時に今上帝は、青龍の存在を理解しておらぬ場合がある。なぜか?はまだ目覚めてはおらぬからだ。原来抱けし者が青龍の存在を、知らずに生涯を終えるが普通だ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る