第119話
「なるほど……」
朱明も瑞獣様の諸々ポポンを、知っているから納得してしまう。
「……で?中宮が悪夢を見ておると?」
金鱗は、面白くて仕方ない様子で言った。
「ふふん。当然だろう?人に言えぬ事をしておるゆえ、判然と語れぬ。陰陽寮も神祇官も如何様にもできぬし、第一高々の人間如きに、できるはずはなかろう?」
「な、何がでございます?」
「よいか陰陽師。そなたは此処を大事にしてくれるゆえ、特別に教えてやるが……神仏が出張って参ったとならば、腹の子は今上帝の子ではないな」
「え?ええ??主上様の御子様でなければ、一体誰の子だと?」
朱明は畏くも恐れ多い今上帝様の妻であられる中宮様に、間男をする程の恐れ知らずの者が、この世に存在するとは信じがたいし、内裏に座して今上帝様以外に、親族しか姿を見せる事のない、宮中の美女が一体どんな男と通ぜるというのか?と考えて荒唐無稽過ぎる金鱗の言葉に唖然とする。
「陰陽師。そなた宮中の噂話しを、聞いておらぬな?よいか?女房達の噂は、 意外と的を得ておる事が多いからな、聞き逃すでないぞ」
「はあ……」
と言っても、そんなに宮中で幅をきかせているわけではないので、知り合いという者も多くない。
何せ出世に無縁の一族なのだ。ある一人を抜かしては……。
「中宮の腹の子は、法皇の胤よ」
「えー?えええ???」
朱明は余りもの荒唐無稽さに、陸に上げられた魚の様になってしまっている。
「いや、いやいやいや……」
「……中宮は入内する前より、養父とそういう関係だという事だ」
そんな噂を、小耳に挟んだ事はあるが、それ程の法皇様の溺愛ぶりであったという話しで……。いやいやそれだけではない、今上帝様が幼い頃から、ずっと中宮様一筋に思い続けておいでだと……。
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