第117話

 陰陽寮の陰陽師達に、中宮様の異常事態を探る命が下された。

 当然の事ながら、神祇官にも寺院にもその命は下された。


「何にしても中宮様の御夢の中に、神仏がお出ましになられるという」


 朱明は、陰陽頭のお言葉に首を傾げる。


「御神仏様方は、何か中宮様にお言葉を、御残しではないのですか?」


 陰陽助が聞いた。


「……覚えておいでになられぬのだ」


「ですが、御神仏であられれば、御神託である可能性もございます。毎夜の様にお越しになられるは、もはや皇子様御誕生の御神託やもしれませぬ」


「しかしながら、酷く中宮様は疲弊され、恐れておいでなのだ……とても吉夢とは思えぬは、神祇の者で無くとも思える事よ」


「とにかく、中宮様の御気鬱は、御子様に影響を与えるゆえ、夢の解明と共にその夢からの御苦しみを和らげるのだ」



 陰陽頭の一声に、陰陽師が声を張った。

 ……とはいっても、またまた難問である。

 神仏が毎日夢に現れ、きっと何かを示唆されているのだろう。

 噂好きの女房達の噂によれば、その夢を見られて中宮様は、恐れ悲鳴をあげられる事もあるとか?

 悲鳴をあげる程の恐れを抱くなどとは、決して良い意味のお告げで無い事は想像できる。

 全く何の因果か、先日今上帝様がお探しの雛を見つけたばかりで、またまた雲を掴む様な難題を課せられてしまった。

 まっ、今回は陰陽寮全体の事であって、朱明だけの重荷とはなってはいないが……。だからといって今上帝におかれては、初めての御子様となられるのだから、懐妊した事が凶事であっては絶対ならない事だ。

 どんなに宮中の者達が厭な予感を抱いたとしても、それを上手い事言い換えて吉事にしなくてはならない。

 つまる処中宮様の悪夢を取り除き、無事中宮様には皇子様をご出産頂き、全てを吉夢へと持って行かなくてはならないのが、今回の使命であると朱明は判断している。

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