第83話
……何と未だに碧雅は、今上帝が気を留める事のなかった、未発達な痩躯に拘りを持っておるのか……
金鱗は、盃を持ったまま碧雅を見入る。
余程悔しいのか、それとも……。
……確かに如何して碧雅の母君は、碧雅の体躯を未発達なままと致したのであろう……
金鱗は、盃に口をつける事を忘れて思案する。
……碧雅は瑞獣として確かに若いが、決して今上帝の相手とならぬ程の雛ではないはず……魚精である金鱗だから、鸞の事は解らないが当然だが、瑞獣の鸞族であろうと、大して精王の名を頂ける金鱗の一族とは変わらないはずだ……となると、人間の姫でいえば大人として認められる、裳着の年頃のちょっと早いパターンだろう……ちょっと早い気はするが、まっ大丈夫だろうから入内させるか……的な。それでも子をなす事がある、くらいの年頃だろうと思うのだが……今上帝が触れてみたのか……とにかく女体では無い……と判断したのならば……如何してだ?金鱗はその事をずっと思案しているが、お妃様の思惑が理解できない……待てよ……
金鱗はふと閃いて、幼顔が残る碧雅を見つめ続ける。
……あれが望まねば、どちらともならぬのか……つまりは言葉そのままなのだ……だが、だったら今上帝が望む事は、今生ではあり得ないだろう?……
だってずっと雛だと思っている……人間の童女だと思い込んでいるのだから……
いくら何でも子供に〝女となれ〟とは言わないだろう。
金鱗はそう思い当たって、手にしていた盃を足の無い平
「そなた
「はん?またその様な事を……雛である。私は……」
「あー、分かった!」
金鱗は碧雅の雛講釈を聞きたくなくて、速攻に遮った。
「早う大人になれ……」
哀れみを持った言い方をされて、碧雅は顔容を膨らませて金鱗を睨め付けるが、その仕草が何と可愛い事だろう……。
こんなに可憐な雛瑞獣を面前にしても、男心が揺らがぬとは、今上帝の執拗なまでの中宮への思いの深さに呆れる金鱗であった。
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