第81話

「法皇は恐れている事実すら知らずに、我が子を恐れておるのさ」


 金鱗は決して丸くはないが、青白くそれは美しく輝く青月を見上げた。


「よいか?青龍は力を好み、貪欲に欲する。は今はああだが、決して法皇に権力を渡す事はしないぞ。今時点あやつが危惧するは、最愛の女の腹に宿る者ができれば、それがどちらの胤であるかという事よ。我が胤と思おうとしても疑心暗鬼となる。ゆえには、決して中宮の子を後には据えぬ……」


「父法皇の子か、今上帝の子か解らぬからか?」


「それもあろうが……法皇に権力への欲を持たせぬ為よ。再び我が子の後見として、実権を欲しいままにしようと淡い夢を抱く。それをあやつは決して許さぬ。

 その隙さえも与えぬ様に致す。今はあれもあの様であるが、青龍は強力な力を保持し、〝力〟という全てのものを欲しがる。それは驚く程に貪欲だ。それ故に青龍を抱けし者が天下を統べれば、その国は大きく大地を広げ、その国に住む者達に栄華を与える。だがその者は覇王となって、天下を治める」


「覇王?」


「徳を持ってではなく、武力・策略を持って諸侯を従え、天下を治める者だ。よいか?今はまだも目覚めておらぬ、幼き頃からの思い人に淡い恋心を抱き、恋い焦がれその思いが叶い妻となった。だがその最愛の妻は、父法皇と関係を続けている……それが権力実権などが絡んでくれば、あやつの真の姿の青龍が牙を剥く。あやつは決して権力を手放さぬ……」


「……だが、次兄君様の子孫は、結局摂関に再び力を与えたぞ?」


「だが、かつての〝この世の春〟は二度と与えなかった。一つは向こうに青龍を抱ける者が誕生しなかった為、もう一つは、青龍を抱けし天子が誕生したからだ。権力は在るべき処に還り、そこに青龍が在れば何の問題があろうか?」









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