第67話

 翌日雛は、今上帝の侍従となって宮仕えの身となっていた。

 陰陽寮の陰陽師の縁者という事で、官位等は無いに等しいのだが、なぜかそれで通常に今上帝の側に侍り、誰一人としてをおかしいと指摘する者がいない。当たり前の様に、今上帝の側に仕えているのだ。

 小舎人こどねり白丁しらばりを着ているが、頑なに冠を被りたがらないので、髪を唐風に双髻そうけいに結わえている。

 采女うねめが一髻で髻を頭上に作り、後ろ髪を後ろに垂らしている。それを完全に持ち上げ、髻を二つ作っているバージョンだ。

 最初長い髪を一つに結んでいたのだが、世話好きと言うか面白がる、というのか女房達が双髻に結わえて見ると、なんとも愛らしく可愛いので、今上帝がえらくお気に召されてしまったのもあり、雛は白丁に双髻姿で今上帝のお側に仕える事となった。

 なんとも恐ろしきかな、瑞獣のゴニョゴニョである。

 知らずの内に本当にチョチョイと、存在を可としてしまった。

 これは考えてみれば、妖、物の怪にもできうる所業だろうから、宮廷の妖狐だの妖怪だのの美女の物語は、あながち嘘ではない様に思われて来る。

 実に恐ろしい奴らだ。

 そして愛に生きる瑞獣だがらだろうか、とにかく女房女官にえらく可愛いがられる。気が利いた処のない雛なので、当然の事ながら気の利いた者しかいない、女房女官には歯痒くダメ出しする事ばかりなのだが、それを根が素直なので、有り難く受け入れて今上帝に尽くしている。

 何を御思いなのか、今上帝も何から何まで雛に御やらせになられるから、見ている伊織すら雛が哀れになったりもする。

 第一今上帝の居所である清涼殿で、朝餉をお召し上がりの時も、女官達にやらせずに雛をお使いになられる。

 ちょっとした理由から、伊織が屋敷に居住させる事になったので、朝は共に伊織の牛車で参内するのだが、参内してからはずっと雛は清涼殿に居る。


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