第40話
大内裏に接して、自然との調和を見事なまでに成し遂げた、古の湖の名残の池を元に造りあげた天子に捧げられた庭園がある。
その湖はかつてより神々が住まう所と言わしめる、霊山である神山に在る神泉という、それは霊験あらたかなる泉の一部から湧き出た湖だとされ、その湖が形を変え小さな物と化しても池として残った。
かつて湖に住まいしもの達は、姿形を変えて其所で生きるか、神山へと住処を逃れたものもいたが、千年程前であったか此処に天子の為の庭園が造られた。
天子はかつて天の最高神が、天孫に国を司らせた子孫だ。
それは尊く気高い者だ。
ゆえに子孫達には、恩恵と恩情が与えられる。
天孫に再び捧げられた神泉からの湧き水はその池を潤わせ、それに調和して造られた庭園を活き活きと育て育み、自然の趣きと雅やかさを誇っている。
かつて湖であった頃に戻ったかの如くの、華やかさを取り戻して……。
かの古の頃、金鱗は未だ未だ幼かった。
だから父精王は金鱗に、神山へ逃げ行く事を命じた。
そして父精王は、涸れゆくかもしれない池と化した湖の底の宮殿で絶え抜き、天子の庭園の大きな池となったこの池で生気を取り戻し、有り難き天子の為に宮廷の護りをする事とした。
成人した金鱗を呼び戻し、この国の魚の王として金鱗に王位を譲って、今は神山で隠遁生活を送っている。
金鱗は長きに渡り、この天子の池で大内裏を護りながら、王妃を迎え暮らしていたが、さても二?三百年程前になるか、内裏にそれは美しくも珍しい童が居て、その童が不思議な力を有し、それに惹かれて交流を持った。
付き合えば付き合う程に可愛らしい童は、人間とは交わりを絶つ様に育てられている事を直ぐに理解した。
それが大神より当時の天子に遣わされた、瑞獣のお妃の一人息子の朱麗であった。
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