第32話

「な、何を申されます?」


 見透かされて、キョドった感が半端ない。


「ふん……残念だが、からな、そなたと同じだ同じ……」


 瑞獣様は嘲笑する様に、全く膨らみの無い平な胸元を、撫で下ろして言った。


 ……おお!そうだった。それで主上様に、はなも引っ掛けて頂けなかったので、こうして正二位の子孫を頼って舞い戻って来たのだった。

 ……とは言っても、瑞獣様は半端無くお綺麗だ。

 たとえ膨らみの無い痩躯ではあるが、この美貌にはヤラレてしまう。

 にヤラレ無い主上様はさすがだ、後宮でそれはそれは厳選された美女を見られてお育ちだから、物凄く目が肥えておいでなのだろう。

 そういえば、中宮様は絶世の美女だとか?

 人間の美女VS瑞獣の美女……の構図が脳裏に浮かんで、ちょっと生唾ものである。

 そんな妄想に駆られていると、瑞獣様は母屋から出てひさしに佇んでいる。

 さすがに家人達には心配なくなったが、何せ短絡的っぽいので何を思いついてしまうかと、の方が気になり出した。


「陰陽師、あれは何だ?」


 瑞獣様は輝くばかりの笑みを浮かべて、池に浮かんだ感のある泉殿と釣殿を見て聞いた。


「あれは……!!!……」


 言いかけて朱明はそれよりも、気にかかる部分を見つけてしまった。


 ……まじかぁ……


 現世の男子のたしなみの一つであるべき、つけていない。

 頭髪を見せるは、男の恥、とまで言われているが、なっていない瑞獣様だが、この図体でこの格好で、女人の様に垂れ流した長髪では〝見っともない〟だろう。


「瑞獣様……」


「なんだ?陰陽師、私は先程からが気になってな。下の池には何かおるのか?」


 ああ、先程朱明が帰宅して、溢れんばかりの煌びやかなるあの笑顔は、を意図して溢れていたのか……

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