第30話
「瑞獣様、木霊の方が瑞獣様より、男に姿を見せてはならない事を、存じているようでございますね……」
無理矢理押し入れた朱明が、いとも簡単に几帳を開けて入って来たので、かなりジト目で瑞獣様が見つめる。
その視線が痛い。
「陰陽師よ。木霊と話しておって思ったのだが……」
朱明はバツの悪い思いをしながら、木霊の声はしなかったのに……と思う。
しかし瑞獣様は話していたと言い、木霊はお喋りらしい……?????
「私は今上帝が望めば姫となるが、今は望まれておらぬゆえ、どちらでも無い」
「はあ……確かに……」
と一応納得はしたものの。
「しかしながら、主上様は絶対に姫でなくば、お喜びになられませぬし、お妃様の様に后妃様にはなられません」
「そうだが、主上が望まぬ今は私の勝手であろう?私はどちらでもないのだ。どちらにもなり得るが、どちらでもない」
朱明は、かなりややこしいな、とうんざりする。
「ゆえに、こんな所に居るのは厭である。今上帝が姫になってくれ、と懇願致す迄姫はやめに致す」
「……えっ?」
「自由にいられる方に致す。ゆえに男となるか?」
「そ、それは?」
「そう固く考えるでない。どちらでもないのだ、どちらの格好を致しても差し障りはあるまい?……そうだ、楽な方に致そう。ここにおる者の格好がよいな?」
「お、お待ちくださいませ」
朱明はサッサと身仕度を替えてしまいそうな瑞獣様の勢いに、ちょっと待ったをかけた。
「ここの者とは、家人の者を言われておるかと……しかしながら、あのお妃様の御子様に、あの様な格好はさせられません」
「なにゆえに?実に動きやすそうだ……」
「瑞獣様方は、如何な格好をなされますか?」
「瑞獣か?あの様に動きやすい格好を望む者もおれば……」
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