今上帝の望む物

第24話

 その日朱明は上司から、それは面倒くさい仕事を仰せつかった。


「……何を探せと、仰せにございまするか?」


 朱明は陰陽寮で、陰陽助おんみょうのすけ様に二度聞きしている。

 上司に二度聞きなど以ての外だが、さすがに陰陽助様も自分が与えた任に、多少の……物凄いあやふや感を否めないから、怒る事もせずに再度伝えてくれる。


「……ゆえに主上様のお探しの物を、探し出して貰いたいのだ……」


「……主上様のお探しの物とは、如何様な物でございます?」


「それが解らぬゆえ、を探して


 朱明は考えた。とにかく陰陽助様がお出での、脳をフル回転させて考える。

 解らない事はしか聞けない。

 ……が、どう考えても解らない。

 ……主上様のは解る……がその先だ、主上様が何をお探しなのか……を探せ?

 ……!!!探れという事か?……

 ……どうやって?……

 一度も御目通りなどした事も無い、雲の上のお方の探し物をどうやって探すのか?


 ……失くした物を探すのか?……

 ……失くし物を占えと?……


 朱明は一瞬にして、ここまで上司の言葉を解読した。


「主上様の失せ物を占えと?」


「……ではないらしい……」


 朱明はピピッと、頰がひきつるのを覚えて、神経質そうな小男を見つめた。


「お側付きの伊織様が仰るには、主上様がそれは珍しく、お気に召したものらしい」


「……もの?人にございますか?」


「おお?人か?……そうとも申すな……」


 朱明は解っていないのは、陰陽助様の方だと理解した。


「……そして伊織様より、主上様が今現在いまお望みのを探せとの仰せなのだ」


「……ならば……」


 と言いかけて朱明は黙った。


 ……つまりは、伊織様は幼き頃よりお側にお仕えの、同じ母の乳を分け合った乳兄弟、と言っても過言ではない貴いお方に、知られる事なく今現在いまお望みのをお知りになりたいのだ。

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