第20話

「な、なんと?」


 期待以上のリアクションに、今上帝は満足の笑みを浮かべた。

 実に可愛いらしいリアクションだ。


「女体?……それは雌である事か?」


 雛瑞獣は、今上帝に縋る様に聞いた。


「そなた達の雌だ……」


「ウッ……それは難儀な……」


 苦悩の表情を浮かべるが、実に可愛いし面白い。


「そなたはどちらが良い?


 雛瑞獣は苦悩を浮かべたまま、探る様に聞いた。


「当然ながら、私はが好きだ。雛のお子ちゃまの痩躯ではなく、大人のである!」


 もの凄く力強く言った。言ったので、言われた雛瑞獣は、そのまま打ちひしがれる様に項垂れた。


「……ならば如何したら、そなたの側に仕えられるのだ」


「無理だな……」


「はっ?」


「無・・・理……」


 面白くて可愛くて、今上帝は思う存分に溜めて言った。


「……しかしながら、そなたが請えば……」


 そして焦らす様に言った瞬間、時が動き始めた。


「えっ?……」


 今上帝は女御の最後の喘ぎ声を、御帳台の外の畳の上で聞いた。


「えっ?雛……?雛?」


 雛瑞獣は一瞬にして姿を消して、暗闇の中にポツリと今上帝は畳の上で唖然とした。


 ……真にアヤツは間が抜けた者よ……


 御帳台の上で女御が呼んで探す声を聞きながら、今上帝は雛瑞獣が項垂れていた場所を見つめた。



 翌日、清涼殿に入って行った輝くばかりの、光の玉の話題で持ちきりとなり、先の大神が遣わせた瑞獣の美女の話しへと及んだが、今上帝は寝所に神よりの遣わしの瑞獣は来なかったと証言し、その後陰陽寮からも神祇しんぎ官からも、神からのご神託の報告は上がらなかった。


「主上様」


 乳母子で、側近中の側近の伊織がはべって言った。


「ご寝所に御神光が入ったのは、事実でございましょう?吉兆でございますよ」


「伊織。私にはしか無いそうだ……」


「凶兆?なんですか?」


「雛がそう言うていたのだ……愛らしく思うておったに、しくじってしまった」


「主上様の御口から、その様なお言葉……」


 伊織は考え深く言葉を切った。


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