第21話

「瑞獣様……」


 朱明は未だ明けきらぬ朝早くに、叩き起こす様にして舞い戻って来た、世にも美しい瑞獣に、それはそれは大きな溜め息を吐いて言った。


「しくじった……私の様に雛であると、后妃にはなれぬのか?」


「雛?……瑞獣様は雛なのでございますか?」


「未だ幼いのだ……」


「……十分にご成長かと?お幾つにございますか?」


「はぁ……人間とは不思議なものよ。如何様にしてそう歳を気に致す?……未だ百と少しなのだ……アヤツの言う処のお子ちゃまなのだ……大人の女体ではないのだ……」


 打ちひしがれた様に吐露する。

 さすがに朱明は、お気の毒になってしまった。


「……確かに、出ているべき処はございませぬが……」


 根が正直なもので、思わずポロリと言ってしまった。

 すると瑞獣様はキッと、それはきつい顔容を向けているが、それが実に美しい。


「……ゆえにお母君様の様に、后妃にはなれぬと言われた……」


「……いや、出る処が出ずとも……」


「后妃になれるのか?」


 瑞獣様は立ち直りを見せて、朱明に縋る様に聞いた。


「はぁ……姫様であれば……」


「姫?」


「ああ、高貴な身分の姫君様でなくば、現在いまは后妃となれません」


「高貴な?私はかつての上皇の御子で、かつての天子と血を分けおうており、女神の御子で神の同腹である。これ程までに高貴な身があろうか?」


 確かに……だが、それは現世ではあり得ない事だ。仮令瑞獣であったとしても……。


「それと一番大事な処でございますが、女人である事が重要でございます。それが后妃様なのですから……瑞獣様は……」


 もの凄く美しいのだが、少ーしの疑問を持って聞いた。


「幼いゆえ分からぬ……というか、お母君様が今上帝に聞いて致せと申したのだ」


「は?はい?」


 当然だが、朱明は聞き返した。

 瑞獣様の言う事は、最初に会った時から理解ができない。

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