第18話

「よいか今上帝よ。我が母君様は、お父君様と今生を共にされ、お父君様が天に召されたを機に、共に伴侶としてお母君様の長き生を、それは片時も離れる事なく共にお暮らしだ。また、ご誕生の砌より大神様より、となる事を許されしお長兄あに君様は、最愛なる弟帝様であられた次兄あに君様と、お長兄君様の長き生を伴侶として、またまた片時も離れる事なく共にお暮らしだ……つまり、側に仕えると言う事はだな……」


「ちょっと待て」


 今上帝は気になっていた事を確かめるべく、雛瑞獣の言葉を遮った。


「雛瑞獣よ。長兄君様の最愛のお方は、弟帝であったか?」


 今上帝の眉間に皺が寄っている。


「おうよ」


 今上帝の思考が物凄く動く。


と言うのならば、そ奴は我が身同様の天子か?」


 そう言ってまた考え込んだ。


 かの昔に大神から平安の治世の祝いに、らんの瑞獣が遣わされ、その瑞獣を寵愛した天子の話しは有名だ。

 ……だとしたら、そのお妃様には御子様はお一人しかおわさず、そのお方は親王宣下を受けておられる。


 ……?????……


その天子が譲位した治世の帝は、今も聖天子とされる。

 天下を我がものとし、摂関政治を強いろうと試みた一族を退け、親政を全うした、今上帝ですら崇め慕い尊敬する祖先だ。

 かの方は後宮には皇后しか置かず、三人の親王と三人の内親王を遺して、譲位するのが当然の様になっていた治世に、みまかられる間際まで在位され、その威厳と威信を重臣達に見せ付け、皇太子に天子としての帝王学を遺された方だ。

 後世まで、その愛妻ぶりが語り継がれている。

 天子の婚儀は、天子のでは無い。決して愛あるものでは無い。

 政治が絡み、天子として高御座たかみくらの座についた時、その貴族達の合意を得て円滑なる政治を行う事が望まれる。

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