第10話

「いいか?愚鈍なる陰陽師よ。瑞獣の生は長〜い長〜いのだ。大神様や八百万の神々様には及ばずとも長いのだ。それに我がお母君様は、大神様より女神として許されし瑞獣なのだ、それはそれは長生きなのだ。そして最愛なるお父君様は、大神様がお母君様が生きている限りの伴侶ゆえ、共に生きるをお許し頂いておるのだ。仲睦まじいお二人ゆえ、私が誕生いたして当然であろう」


 まるで当然の事の様に、プリプリと怒っている。


「えっ?ちょ、ちょい待ち……って事は、お前……もとい貴方様は、かの伝説のお方様の御子様で?」


「その伝説云々が解らぬが、私のお母君様は、瑞獣で大神様にご寵愛を得る女神である」


 ……まじかー……


 朱明はいろいろと変な物を見ては来たが、まさかまさかのこの国で知らぬ者は存在しないとまで言われる、かの伝説のお妃様の御子様と出逢えるとは……それも二百年も時を経て?


 ……一体瑞獣って何百年毎に出産しているんだ?……


 なんて感心していたら


「……其方如何様にか致せよ」


 先程とはうって変わって、それはそれは威圧的に命じられた。

 否、たぶん瑞獣は同じなのだろうが、お受けする朱明の心得が違う。だってずっとずっと刷り込まれる様に言い伝えられる、それは美貌のお妃様と、先の先の先の……天子様の御子様であられるから、朱明は畏まってお声を拝聴させて頂いている感が表れた。


「如何致せと申されましても……私は天子様のお姿さえ、仰ぎ見る事すら許されない身分ですから……」


「ほっ?なんと?」


 瑞獣様は呆れた様子をめいっぱい醸し出して、朱明を覗き見ている。

 その高貴で美しい様は、薄暗がりの中でも漂って見える。正確に言えば見え始めた。


「……そなたは役立たずであるわけか……」


 ウッと息を呑んだが、確かに的を得ている。


「だがそなたには良い事を聞いた……」


 そう言うと瑞獣様はスッと、姿を

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