第4話
かの昔、曾祖父さんだか曾曾祖父だか……とにかく当時の天子かお妃様の御子に、それは寵愛された〝かの方〟は、時の事情も相俟ってそれは驚く程の出世を遂げた。
陰陽師の中でもペエペエ陰陽師から、正二位の公卿に迄だ。
朱明の一族には、それはそれは名を馳せた者達が存在するが、その中でも一番の出世頭と言っていい。
とにかく一族の中で一番の有名人は、それは物凄い術を操れたらしいから、それ以上のものを操れたという事なのだろが、兎にも角にも長年鬼とか魑魅魍魎とかといった、物凄い大物は登場しなかったから、そういった術師達の子孫といっても、その術の使い方とか扱い方を知る者が存在しない。
まぁ、みんなこの平安の世、なに不自由なく育っているから、文献を紐解いて勉強とやらには余念はないが、実践してない物ができる筈は無く、腕に自信があったり頭が良かったりした者の方が、気の毒に喰われている事が多いのが実情だ。
残念ながら朱明の様に、先祖の恩恵を得られていない者達は……。
朱明の家系はあの正二位の祖先の直系だ。
かの有名人とは違う家系らしいが、そこの処があやふやなのだが、大らかなこの時代なので、引っ括めて〝一族〟と呼んでいる。
まっ、何処ぞのお偉い家系では摂家とか大臣家とか、北とか南とか分けている処もある様だが、なにせ有名陰陽師とは、分家筋というのもあやふやな我が家系は、とにかく正二位が存在したお陰で〝一族〟と纏める事を許されている。
その正二位の直系の嫡子だけに、この有り難い恩恵が引き継がれる。
……といっても、全く危険に曝される事の無かったこの痣は、長年ただの痣でしかなくて、有り難い物だと知ったのは朱明が初めてと言っていいと思う。
第一平安安泰の時代は大物は存在しなく、小物の怨霊や怨念の様な物の調伏が、陰陽師の仕事となっていた。
都に恨みを持った怨霊だとか、朝廷を恨む怨念だとかの大物達は、さすがにその威力を封じられていた。
かのお妃様に……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます