変態先輩と変態パイパイ【2020夏物語】
まいてい
第1話 変態先輩と変態パイパイ
『今日わぁ、先輩とランチィ♪
今日わぁ、デカパイにタッチィ♪
今日わぁ、いっぱいエッチィ♪
んんんwww ぶひぃぃぃぃぃーーーー 』
いかにも頭の悪そうなそのツィートが目に入ってきました。
一体どんな人が呟いたのでしょうか?
世の中には変な人がいっぱいいますねぇ。
ま、まぁ何はともあれ、仲の良い先輩後輩カップルって事ですね、アハハ……
なんか見ているとこちらが妙に恥ずかしくなってきたので、スマホの画面を閉じます。
はぁ……恋人、ほしいなぁ。
私は嘆息します。
…………
おっと、いつもの悪い癖が。
いけません、いけません。
今日こそは恋人作ります!
今がチャンスなのです。
何故って?
今日は会社の社員旅行1日目。
2020年夏、行き先は夏らしく海!
気になるあの人に声をかけるいい機会です。
パンデミックも無事収まり、世の人々がこぞって海へと向かう今日この頃。
わたしはウキウキしながら、鏡の前で服を決めます。
あくせくしながら、結局選んだのは水色のワンピースに麦わら帽子。
もうちょっとピンク色とか使いたかったけど、ふと下着はピンクだったことを思い出します。
ま、それならいっか。
もしかして、今日この下着をお披露目なんてことになったりするのかなぁ。そんな妄想をしながら、私は家を後にします。
バスの席は後輩の
「せんぱーい、今日も仲良くしましょうねー」
有海は私の腕に頬をすりすりとこすりつけます。
「や、やめてください」
「離しませんよーせんぱーい」
はぁ……
この女の子は有海。会社では後輩にあたる子で、わたしによくなついてきます。
噂では、同性愛に目覚めたみたいなことを風のうわさで聞いたのですが、実際どうなんでしょう。
「わたしも先輩の子を産みたいですぅー海だけにぃーみたいな、きゃはは」
「……」
いやこれ同性愛に目覚めた人だ、本物だ。
わたしの変態レーダーに引っかかりましたよ、この人。
わたしの頭の中でwanted・指名手配のビラが高らかに舞い散ります。
「孕んでくださいよぉ、私の子供」
「孕めませんし、産めません! いいから、離してください」
「ほら、『あん♡するよりも産むが易し』って言うじゃないですか」
「案ずるよりもです!」
「あぁ、そうでしたぁ。もぅ、冗談ですよぉ冗談。きゃはは」
有海は大笑いしながらパッと手を離してくれます。
この人、ほんと何言ってるんでしょう。
冗談にしては笑えないジョークでしたけど……
「それに、わたし狙ってる人いるんですよ」
有海は私にそう耳打ちします。
えっ有海にもそんな人が!? 私は気になりました。
「誰ですか?」
「せんぱいですぅ」
「真面目に答えてください」
「むぅ」
「……」
「平川さんですぅ」
平川さん、なんだ平川さんか。
ってえええええ!?
被っちゃいました。
私もその人、狙ってたのに……
平川さんはわたしの先輩にあたる人で、とってもカッコ良くて優しいのです。
「へ、へぇ。そ、そうなんですか」
「そうなんですよ。今日、告白しようと思ってるんですよ~」
「こくはっ」
まずい、止めないと!
「そう、昼のバーベキューでお話して、夕日の沈む海を二人で見ながらそっとパイタッチしてもらってぇ、真夜中の静かなビーチで禁断の行為を……きゃー」
有海は顔に手を当てて左右に顔を振ります。
わたしは、というと顔をかぁぁぁと赤らめて想像してしまいます。
ビーチエッチかぁ……
「だ、だめですよ。そんな」
「どうして?」
「ほら、『人の口に戸は立てられぬ』っていうじゃないですか? 誰かに見られたら晒されますよ、ネットとかに」
まずい、この人止めないと。私の告白が。
させません!
「でも、『女の下口に戸は立てられぬ』ともいいますし。私の下口を止められるやつはいないってか、きゃはは」
切り返し方が斜め上すぎですよ……
この人、どんだけ卑猥なんですか。わたしはポカンと口を開けます。
「せんぱーい、どうしたんですかぁ? そんなまん○りと口を開けてぇ」
「それをいうなら、あんぐりとです!」
「ジョークですよぉ〜そんなこと言ってぇ、先輩も平川さんのこと気になってるんじゃないですか?」
「……そうです」
ここで嘘をついたら、大事な人がこの人に捕られてしまう。
そんな気がした私は思い切って対抗します。
それを聞いた有海はさすがに驚いたのか目を大きく見開きましたが、瞬く間にその顔は怖い顔へと変化して行きます。
「じゃあ……わたしたちぃライバルですね、先輩」
有海は低い声でそう言いました。
「……そうなりますね、後輩」
その後はギスギスした空気の中、一言も喋らないままスマホをいじって沈黙を繋ぎます。
とっても気まずいです……
海についたら、開放感でいっぱいでした。
青い空、青い海。あふれんばかりのたくさんの人がビーチにはいました。
「わああああ、カップルもおっぱいいますねぇ~」
「それを言うなら、い、いっぱいですよ。わあぁぁぁ、海だー!」
またもや有海。ギスギスした空気? なんですか、それ。海に行ったらみんな仲良く♪
やっぱり人間って不思議です。だって、たくさんの人が集まるだけで楽しい気分になれるのですから。
恋人って不思議です。だって、一緒にいるだけで幸せな気分になることができるのですから。
真夏の太陽の日差しがさす中、二人は恋に落ちます。
「えーではこれよりー、バーベキューを開始したいと思いまーす。合掌、いただきまーす」
「「「いただきまーす」」」
の合図とともに始まりました、争奪戦。
肉食の男女が奪い合います。
「あっ、それわたしの肉」
「へへーん、俺のが早かったもんねー」
おやおや、カップルの気配。微笑ましいものです。
「ちょっとぉ、平川さん返してくださいよー」
前言撤回。カップルではありませんでした。
有海と平川さんでした。
わたしが恨めしそうにジト目で見ていると、視線に気付いた平川さんはわたしの方へと来ます。
「やっほー、よかったら一緒に食べない?」
「喜んでっ!」
よしっ!
わたしは心の中でガッツポーズを決めます。
このままいいムードに持っていって、誠意を示していただけるなら、今度は……その時は、私を食べさせてあげましょう。
そんな妄想をしていると、
「先輩だけずるいですぅー」
どこから湧いてきたのか、有海が平川さんの腕に抱きついてそう言います。
平川さんはというと、ちょっと恥ずかしそうに顔を赤らめてました。
「えいっ」
わたしも負けじと抱きつきます。
「わたしのおっぱいぃ揉んでくださいぃ」
この痴女が、わたしも負けてられません!
「わ、わたしのもお願いします……」
「ちょっ、ちょっと2人とも」
モテモテの平川さんは次第に困った顔をします。
ちょっとやり過ぎでしたか。
きっと紳士な平川さんを困らせたに違いありません。
と思いきや、平川さんの顔が緩み、鼻から鼻血がだらりと。
「揉ませろよぉ〜」
えっ!?
誰の声ですか?
いや、この声は他でもなく平川さんの声でした。
ヤバイ、この人変態なパターンの人だわコレ。
『三つ子の魂百まで・スケベの魂百まで』
「わたしわぁ、別に構いませんけどぉ」
有海はそう言う。
痴女がいました!
変態先輩と変態パイパイ女がここに!?
今、昼間ですけど、昼間なんですけど!?
ほら、もうなんか取り返しのつかないレベルの数の視線が集まってますし……
しかし、先輩は周りの視線などどこ吹く風といった様子で両手で両サイドの乙女の胸をモミモミ揉みます。
「有海ちゃんの胸おっきいね。でも、君のはなんというかその、可愛らしいね」
こんな軽い男だったなんて……
「最低っ!」
バチンッ
わたしは先輩の頬を引っ叩きます。
「やめてください。勝手に触らないで」
「だって、お願いしますって……」
「そんなの、冗談に決まってるでしょ!」
「せんぱぁい、そんなパンパン怒んなくてもぉ〜」
「それを言うなら、ぷんぷんです!」
なんなんですか、この人……
わたしは砂浜から離れて、岩場の方へ行きます。
わたしって本当バカ!
平川さんのバカ!
バカバカバカ!
わたしだけを、見て欲しかったのに……
楽しみに、してたのに……
スマホを開きます。
アプリを起動してあるツィートを見つめます。
『今日わぁ、先輩とランチィ♪
今日わぁ、デカパイにタッチィ♪(してもらう)
今日わぁ、いっぱいエッチィ♪
んんんwww ぶひぃぃぃぃぃーーーー 』
わたしは、投稿したそのツィートをそっと消します。
でも、このツィート……
よくよく見たらわたしも変態だよなぁ……
がっくりと岩場で肩を落とす私。
反射的に撃退しちゃったけど、ちょっと我慢すればあのイケメンが抱いてくれたかもしれないのに……
でもでも、いきなりってのはやっぱりデリカシーなさすがです!
そんなことをブヒブヒと考えていると声をかけられました。
「あの……どうされました?」
振り返ると、そこにはイケメンな男性が。
「はい?」
「あの、良かったら一緒に泳ぎませんか?」
その男性は屈んでこちらに手を差し出してきます。
「そ、その……はぃ」
わたしは男性の手を取ります。
潮風とともにやってきた新しい恋。
失恋、それは新しい恋のはじまり。
変態先輩と変態パイパイ【2020夏物語】 まいてい @mizukisan321
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