黄昏物語

雨世界

1 森の妖精

 黄昏物語


 プロローグ


 ある森の奥にある、地方に残る古い言い伝え


 子供の目を通して世界を見ること。

 子供の耳を借りて風の音を聞くこと。

 子供の口を自由にして真実を語ること。


 そして、子供の心を思い出して、……をすること。(一番、大切な場所は、文字がかすれて読むことはできなかった)


 本編


 おかえりなさい。……ずっと待ってたよ。(さようなら。元気でね)


 登場人物


 仲の良い双子の姉妹


 常葉みぞれ 十六歳 双子の姉


 常葉あられ 十六歳 双子の妹


 森の妖精


 私は夏の終わりに、森の妖精と出会った。


 森の妖精は、にっこりと明るい顔で笑っていた。


 本当に楽しそうに。

 幸せそうに、笑っていた。


 青空の下で。

 明るい太陽の光の中で、笑っていた。


 私も、いつの間にか笑っていた。

 すっごく楽しくて、ずっと、ずっと笑っていた。


 森の妖精は、私が笑っているのを見て、すごく嬉しそうな顔をした。

 森の妖精は、私が泣いていると、自分も涙を流して、すごく悲しい顔をした。

 

 私は森の妖精が泣いているところを見たくなかった。


 だからできるだけ、私は森の妖精の前では笑っていることにした。

 すると、だんだん最初は嘘だったのに、私の気持ちは本当に楽しい気持ちになった。

 それはすごく不思議な体験だった。


「明日も、またあなたに会える?」と家に帰る時間になった、夕焼け色に染まる世界の中で私は言った。

 森の妖精はにっこりと笑って、「」と私に言った。(森の妖精さんがなんて言ったのか、私はもう忘れてしまっていた)


 森の妖精は私にばいばいと手を振って、そのままうっすらとまるで夕焼けの色に染められてた、黄昏に染まる森の風景の中に溶けていくようにして、消えてしまった。


 私はそのとき、たぶん、泣いていたと思う。(どうして泣いているの? と家に帰ったときに、お母さんに聞かれた記憶が残っていたからだ)


 そこで私は夢の中から、目を覚ました。


 ……それはずっと昔の、私がまだ本当に小さな子供時代に本当にあった不思議な、でも、もうずっと私が忘れてしまっていた、とても大切な思い出だった。

 そんな懐かしい(どこに埋めてしまったのか、自分でも忘れてしまったみたいな)宝物みたいな思い出を、今日、きゅうに思い出すことができて、私はすごく嬉しかったのだけど、でも、同時に、あることがとても深い疑問になって私の心の中に残っていた。

 それはどうして、ずっと忘れていた森の妖精さんのことを、私が今になってこうして、思い出すことができたのか? と言う疑問だった。


 黄昏の世界で暮らしている姉妹


 ……あるところに、みぞれとあられという名前のとても仲の良い双子の姉妹が二人だけで、森の奥に、ひっそりと暮らしていました。


「みぞれお姉ちゃん? もう起きている?」

 ドアの向こう側で、そんな妹のあられの声がした。

「……うん。もう、ちゃんと起きているよ」

 とみぞれはベットの上に横になったままで、妹のあられにそう言った。

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黄昏物語 雨世界 @amesekai

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