第301話 保護者は誰?
悪魔祓いのメグに俺達が宝石の丘への道、その途中にある異界の狭間を目指す計画であることを教えると、ようやく落ち着きを取り戻して冷静な会話ができるようになった。
「とりあえず事情はわかったのです。不幸な殺し合いもお互い様とはいえ、教会側から仕掛けたという話であれば謝罪も当然なのです。本当はもっとお偉いさんが頭下げに来るのが筋なのですが、メグが変わって謝罪もするです。申し訳なかったのです」
「謝罪自体はもう何度も受けているからお前が頭を下げることはない。それに個人的な関係で言ったら、俺はお前の先輩にあたる悪魔祓いを殺しているからな。恨まれても仕方ないくらいだ」
「お姉さま方が立派に殉職したことは理解しているのです。ただ力が及ばなかっただけで、それでも結果的に
思い返せば悪魔祓い達の読みは正しかった。幻想種・
「よし、これでお互いのわだかまりは解けたな。準備が良ければ早速、魔窟へ出向きたいんだが……」
「それならばまず、ギルド本部で冒険者登録をするです。メグはまだ登録していないのです」
「ん? 登録……あっ!?」
俺はラウリの禿げ頭を思い出して、うっかり忘れていたことに気が付いた。
「メルヴィとミラもまだ冒険者登録してなかったな……」
「あー……。許可取らずに一回、魔窟に潜っちゃったね」
「あら~ん? でも、誰も何も言わなかったわよん?」
「そうね。魔窟へ入るときの手続きでクレストフと一緒にいたけど、ギルド支部の受付嬢にも何も言われなかったわ」
そう言うと受付嬢のヴィオラへと視線を向ける。
「……それはいつの話でしょうか?」
ヴィオラは凍りついた笑顔のまま口を開く。
「今朝だな。ミラとメルヴィの二人も連れて、第三階層で戦ってきた。罰金くらいなら払うが……」
「今日の朝ですね。クレストフさん達と一緒に受付にミラさん、メルヴィさんも一緒だったと。間違いありませんか?」
「間違いないわよ。私、ティルナとかいう若い子にご苦労様って声をかけたもの」
ミラの発言を聞いてヴィオラの額に青筋が浮かぶ。
「んふふふ……そうでしたかー、ティルナがー。大変失礼しました。本来であれば、ギルド側で注意喚起するべきところでした。今回、罰則は適用されないと思いますので、登録だけギルド本部で速やかに済ませてください。その場合、今回に限りミラさんとメルヴィさんに冒険者レベルの振り分けはできませんがご了承ください」
「いや、すまない。こちらもうっかりしていた」
とりあえず面倒ごとにはならなくて済みそうだ。
そうなればさっさと登録を済ませてしまおうと、俺達はギルドマスターのラウリがいるギルド本部へと足を運ぶのだった。
「なるほど……そいつらが兄ちゃんの集めた仲間で、新しく冒険者登録したいってわけか……」
これから魔窟へと潜る全員でギルド本部を訪れたところ、ギルドマスターのラウリは何とも形容しがたい表情で唸った。
「兄ちゃんの紹介だからよぉ、信じないわけじゃないんだがな……。さすがに理解が追いつかねぇ」
「見た目はあれだが、いずれも腕の立つ術士だ」
「しかしなぁ……揃いも揃って子供ばかりってのはどうなんだ? 兄ちゃんが保護者ってことで責任取れんのか?」
「……全員、自分のことは自分で責任を持てる年だから問題ない……」
自分で言っておきながら、この光景は理不尽だと俺も思う。
「なによ、この登録書。淑女に年齢を書かせるなんて失礼でしょ。呪うわよ。私は絶対に書かないからね」
一番見た目が若い幼女姿のミラが、むしろ一番の年長者だった。
「今更、年の一つ二つ重ねたところで恥じる年齢じゃないでしょ。僕は正直に書くよ、えーと六十……あれ、いくつだったかな?」
次がムンディ教授だ。見た目の年齢はミラよりも少し上だが、年は若干下(ミラ曰く)というのだから、もうこの辺りから混乱してくる。
「う~ん、得意な技能って何書けばいいのかしらぁ? 魅了のポーズ、とかぁ?」
「メルヴィさん、まじめに書いてくださいよ」
すぐにふざけたことを書こうとするメルヴィに付き添っているヨモサ。年齢的には仲間内で一番若いのはメルヴィになる。彼女よりも子供っぽく見えるヨモサは、聞けばなんと十八歳だった。
「ふんふーん。所属は聖霊教会でー、稀代の
「あ、メグは必殺技、そういう名前にしたんだ。あたしは登録のとき『流星落とし』って書いたよ。使ったことないけど」
実年齢や精神年齢は別にして頭が弱いのもいる。門外不出の奥義の名前を堂々と出していいのか?
「頼むぜ……兄ちゃんよぉ……」
「あぁ……まあ努力する」
ラウリの見解では俺が保護者で確定のようだった。
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