【番外編】1にゃす「にじげんバーコードのどろぼう」
とある休日。
現在午後3時前。空は曇りだが、過ごしやすさ的には快適だ。長袖一枚で十分過ごせて、昼ぐらいは少し汗ばむぐらいだった。
わこは、にゃすにまた会、お届け物をお願いしようと思って近所の雑貨屋にいる。雑貨屋と言ってもお婆さんが切り盛りしていて、ちょっとした食料品や生活用品などを置いている街のローカルコンビニみたいな場所だ。
今の時間だとほとんど人がいないので、ゆっくりと商品も見れるし、なんとなく交わすお婆さんとの会話も気に入っている。お婆さんはこの土地にずっと住んでおり、近所のイベントや他のお店の人から聞いた話など、この街の情報を広く知っている。
木製の商品棚は入り口手前左から、生活用品、ペットや植木などの外用品、お菓子や出汁や液体調味料など冷蔵を必要としない食品、一番右側に冷凍庫と冷蔵食品が並んでいる。
まずは目的の棚に向い、かごににゃすたちへ献上する液状のおやつと大きな煮干しをカゴに入れた。ついでに買い物しながら思い出したトイレの芳香剤の詰め替え用と、バニラのコーンアイスも追加した。
木製の机の上にレジが置いてあり、そこにカゴを置いて、奥でまったりしているお婆ちゃんに声をかける。
「お会計お願いしますー」
すると、とおくからはいはいーと返事があり、30秒ほどで顔を出してくれる。
こんなセキュリティだと万引きが多発してお店が潰れてしまうのではないかと心配になるが、息子さんも同じことを考えていたようで、防犯カメラや入り口にセキュリティ対策などが施されており、このローカルで古めかしい店を支えている。
「お待たせしましたー、あらーいつもありがとうねー」
「いえいえ、たまの買い物ですみません」
「そんなことないのよ、お話させてもらうだけでね、楽しいから」
こんな具合にいつも会話が広がっていく。
が、今回は現代的な会話になった。
「そうそう、うちのお店もね、電子マネーって言うの?二次元バーコードで決済ができるように息子がしてくれたのよ」
「そうなのですか、どこにバーコードあります?」
「ああ、そうそう」
木製の机の下に置いてあったようで、バーコードを見せてもらうと、最近急成長、拡大しているサービスのものだった。確かわたしもキャンペーンでいくらかチャージされていたと思う。
「あー、最近よく見かけますよね。せっかくなんでバーコードで払ってみてもいいですか?」
「もちろんよー、わたしもね、ちょっと自信がないから一緒に試してみてくれない?」
こういう孫との会話みたいのがほっこりする。
立っているのは大変だからと、椅子を用意してくれ座りながら一緒に進める。こういうアプリが必要なんですよ、お客さんにこう言われたらここを開いてもらってくださいね、など画面を二人で覗きながら進めていく。
すると手にもふっとした細いものが当たった。
「にゃーもちゃりんしたいにゃす、わこ、ばーこーどみせてにゃす」
あの白にゃすがいつの間にか隣におり、2人と1匹で画面をのぞいていた。
もふもふ、あーなんて気持ちいいのでしょう。
「あらにゃすちゃん、いらっしゃい」
なんと、にゃすはお婆さんと知り合いらしい。ここにも知り合いがいるとは、にゃすを知ってるは案外多いのかしら。今度聞いてみよう。
それより今は、にゃすの右前足もとい右手にはケータイらしきものが気になる。
「にゃす、そのケータイみたいなのは何?」
「ばーこーど、ピッてするやつにゃ、わこのみせて」
む?
気になることを聞いてみた。
「ピッっとするとどうなるの?」
「にゃすたちがおいしいもの、かえるにゃ」
「にゃすにゃす」「にゃーにゃー」
むむむ、これは、これはこれは、バーコードを見せたらわたしのお金がちゃりんされてしまうのでは。
てゆうか、それを理解している!
そして、にゃすにゃすといろいろな声が聞こえると思ったら、にゃすの行列ができている。たぶん、このお店のお会計ではなく、わたしからのお布施?のため。
「あらあら、たくさんお客さんが来たわね〜」
とお婆さんはのんびりと答えた。
流石にね、お金は!と思い棚から追加で液状おやつを購入し、お婆さんには事情を話して現金でささっとお会計。逆握手会のようにおやつを手渡ししながら握手させてもらった。
にゃすって結構知能高いんじゃない?(あのケータイ何?)
今日、手は洗えません。
にゃすにゃすQ便〜おとどけするにゃ〜 襟井笠 @nyas_nyas
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