ひとつの星

眠り損ねた夜明け前

ふと、窓を開けてみる

晩秋の空はまだ暗い

さすがに冷え込むな、と

カーディガンの前をかき合わせて

見上げた空に

小さなひとつの星


それは決して明るくはないけれど

確かに其処に


其処に在るということ

誰にも知られなくとも

確かに存在しているということ


星もわたしもいつかは消えゆくけれど

確かに其処に存在していたということ


小さな星よ

人知れず其処にある星よ

何年前かの光はそれでも確かに今、届いた



命は消えゆく瞬間まで命で

それは

沢山の存在の中のひとつでしかなくとも

代わりのない

たったひとつだけの存在

その光を、その瞬きを

わたしは確かに見ている


忘れはしない

忘れられるはずがない


此処にあるということ

日々を紡いでいるということ

だから最後まで見届ける


わたしもいつかその道を辿るだろうけれど

命ある限りはせめて懸命に


人は小さき存在かもしれないけれど

命は想い出として心で繋がっていく

生きた証はこうして確かに残っていく


忘れはしない


忘れはしない。

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