第44話 確認

 車に乗り込みルージュに向かう。数十分後、近くにまで辿りついた。気づかれないように店の正面を避け、回り込み駐車場に車を停めた。すでにルージュはオープンしており、従業員と客の車が多く並んでいた。車内からシルバーの車を探し、端っこに停めているお目当ての車を見つけた。車種もフィットである。

 車から降り、近づいていくとナンバーを確認した。『い』の頭の数字が『2』だった。証言通りだ。やはり双葉が犯人だった。古手川はあたりを見渡し誰もいないことを知ると、車内を確認してみた。なにか証拠はないかと思ったが、綺麗に整頓されていた。

 しかし上出来だ。やっと犯人の尻尾を捕まえることができた。長かく辛い道だった。三人の被害者も出してしまったことが、なによりの後悔だ。達成感などはない。申し訳なさで胸がいっぱいだった。


 古手川は車に乗り込むと、駐車場を出た。またここへやってくる。双葉を捕まえるため、必ず。もう素知らぬ顔をして街を歩かせることはない。


 急いで署に向かった。まずは武藤のもとに向かい話してみることにした。武藤は話を聞き終えるとこくりと頷き、間違いないなと言った。武藤と共に主任に説明しにいくと、あっさりと重要参考人として引っ張る許可が出た。主任もこの事件にはやく終止符を打ちたいのだ。


「よし、行こうか」と武藤は言った。

「はい」

「よく突き止めた。遅れると電話かかってきたときは何事かと思ったが、そんな理由があったとはな。もっとも、前もって言ってくれても良かったと思うが」

「すいません。ちゃんと確かめてから話したくて」

「いいさ。お前の手柄なんだから」


 ルージュに向かい、一時間ぶりにここの駐車場に車を停めた。シルバーのフィットはまだ停まっている。車を降り、店に歩みを進めた。中に入ると、店長がいらっしゃいませと言った。顔を向け古手川たちに向けると、あっと口を開けた。昨日とは違う様子に、少々戸惑っている。

 双葉は客の髪をカットしている手を止め、こちらを見ていた。苦虫を噛み潰したような顔をしている。なんの目的で来たかわかっているのだ。逃げ出そうとはしなかった。双葉から諦めにも似た雰囲気を感じた。

 双葉に近づいていくと、古手川は言った。

「どうして来たかもうわかってますね」

 双葉はため息をつき、舌を打った。「お二人とも、髪を切りにきたわけじゃないんでしょ」

「それはまたの機会にしてもらいましょう。同行して頂けますね?」

「ああ……」

「行こう」

 双葉を前に歩かせ、店を出ていった。店長も三岳も他の従業員も、カットの途中だった客も唖然として見ていた。武藤は一言、重要参考人として署に同行してもらうんですと告げた。誰からも返事はなく、唖然は依然として続いていた。ニュースを見て、きっと驚くことになるのだろう。

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