6回裏 ついに準決勝! VS因縁のライバル刈摩の良徳学園

370球目 浜甲の勝利は偶然じゃない

 浜甲はまこう学園VS臨港りんこう学園の試合を途中から観戦していた福口ふくぐち(神戸ポートタウン大付属)は、驚きの表情を隠せない。



「はぁー。本当に監督の言うとおりでしたぁ」



 村下むらした監督は、浜甲はまこう学園が臨港りんこう学園の打者から逃げずに勝負すれば、ほぼ互角のスコアになると予言していた(https://kakuyomu.jp/works/1177354054895930927/episodes/16816452218705125746参照)。



「データを読み解いただけで、大したことじゃないよ」


「でも、ツーアウトになった時は、もう浜甲はまこう負けた思いましたよぉ」


「君は浜甲はまこうがラッキーで勝ったと思っているのかい?」



 村下むらした監督が丸メガネを押し上げて、目を光らせる。福口ふくぐちはまたイヤミを言われると思い、小さなタメ息を吐く。



「はい、そう思いました」


「やれやれ、君は洞察力をもっと磨くべきだよ。浜甲はまこう打線は生野いきのを打てずにいたが、球数を出来るだけ投げさせていた。特に火星ひぼし君は4打席で37球、見事だ。それがたまりにたまって132球。上位打線に打たれて降板は必然だ」


「では、番馬ばんばの時に再びマウンドに戻したのは、愚策ということですか?」


「そのとおり。あの場面は相見あいみ続投で良かった。番馬ばんば君のプッシュバントも、相見あいみ君ならダイレクトで捕っただろうね」


「なるほど、なるほど」


「まぁ、1人のピッチャーに頼り過ぎるのは良くないよ。うちみたいにエース級が3人いないとね」


「3人? 4人じゃないですか?」


「あんな奴はピッチャーとは言わない」



 村下むらした監督は冷徹な目をポートタウン4人目の投手に向ける。当の本人は試合を全く見ずに、漫画を読みふけっていた。



(続く)

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