4万PV記念おまけストーリー 青龍ピッチャーVS白虎バッター

 浜甲はまく学園と臨港りんこう学園の試合当日の朝、満賀まんが高校のグラウンド一杯に、緑の東洋龍がとぐろをまいて寝ていた。その龍は満賀まんがの野球部監督・龍水りゅうすい崇史たかふみである。



 この時期の満賀まんが高校の部活は校内で合宿を行うため、校舎に泊まる生徒が多い。生徒が夜な夜な遊びに行かないよう、番犬ならぬ番龍の役目を果たしていた。



「いっ、いっでぇ!!」



 龍水りゅうすいは悲痛な叫び声を上げて起きる。彼の尻尾の根元を、両把頭りょうはとうに結った髪を生やした白虎が噛みついていた。



「野球しヨ、リュースイ、野球、ヤキュー!」



 その虎は幼さの残る顔立ちで、カタコトの日本語を喋る。



「朝っぱらから元気やなぁ、君」


「うちも野球始めたんヨ。実試させてヨ」



 彼女は中国人のえん琳琥りんこ、過去の四神戦しじんせん龍水りゅうすいと戦ったことがある(https://kakuyomu.jp/works/1177354054895930927/episodes/1177354055142133350)。



「わかったよ、琳琥りんこ。準備するからちょい待ち」



 彼は人間に戻って野球部員を起こし、軽く準備体操をさせた。レギュラー陣をそれぞれのポジションにつける。



「1打席勝負やからな。終わったら帰れよ」


「うん! ラジャーしたヨ!」



 彼女は虎獣人と化して打席に入る。同じ虎獣人の天塩あまじおと違い筋肉量は少ないが、体の柔らかさはヨガの達人級である。



 龍水りゅうすいは龍人になり、150キロ超のストレートを内角高めインハイに投げ込む。琳琥りんこは瞬時に腕をたたんで打ち返した。弾丸ライナーで三遊間を抜けていく。



「ヒット~。うちの勝ちヨ~!」


「いきなりアレを打つんかー。琳琥りんこ、どこの高校行くんや?」


「うちは“学園”生活憧れてるから、リンコーやハマコーやヤギ行きたいヨ」



 琳琥りんこは舌を少し出して笑ってみせる。龍水りゅうすいはヒゲがだらしなく下がり、肩を落とした。



(続く)

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