196球目 同点止まりにしない

 球審がホームベースを食い入るように見る。そして、手を水平に開く。



「セーフ、セーフ!」


「よっしゃあ!」


「同点やー!」



 ついに、ついに、ついに、追いついた!!



 木津きづはしゃがんでロージンバックを手に取る。もう余裕の笑みは消え、悲愴感ひそうかんただよう顔だ。



 このまま連打で逆転できるか?



 しかし、木津きづの意地で東代とうだいが三振、宅部やかべさんがセンターフライに抑えられてしまった。



取塚とりつか君ゴー!」



 真池まいけさんの代打に取塚とりつかさんが送られる。幽霊の夕川ゆうかわさんの力を借りてバッティングすれば、俺以上の強打者になる。



 木津きづは内外にボールを散らして、取塚とりつかさんを1-2に追い込んだ。



 運命の4球目は真ん中高めへ。



 取塚とりつかさんは「甲子園!」と叫んで、木津きづのボールを打ちくだく。



打球はライトの深い所へ。取塚とりつかさんは2塁に到達した。



「あたしも続くよー」



 津灯つとうが打席に入ると、木津きづは3回目のハンズキャノンを発動させる。



「逆転はさせん!」



 木津きづが眉間にしわを寄せ、スナイパーの眼光を放つ。



 津灯つとうはバットを寝かし、バックスイングなしの構えをする。出会った当初の東代とうだいが、俺のストレートを打った時の構え(8球目参照https://kakuyomu.jp/works/1177354054895930927/episodes/1177354054896072037)だ。



(続く)

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