第36話 事情説明
「その前にこの腕輪外してもらえませんか?じゃないとどうしようもないので。」
本当は、魔法なんか使えるがやはり隠しておいたほうがいいだろう。
「騎士よ。頼む。」
「はっ。」
警戒した足取りで俺の腕輪を取り外してくる。それもそうだろう。彼らにとって俺は不審者であることに違いないのだから。
「解除っていだだだだだ。」
外されたので魔法を解除する。その反動でまた体が作り替えられている。その場でもがき苦しむ
するとすぐにいつもの見慣れた髪が目に入ってきた。
「あー、どうもお久しぶりです。国王陛下。」
声もしっかりと元に戻っていることも確認した。するとどうだろうか。ぽかんと顎が抜けそうなぐらい口を開いている国王陛下がいた。近衛騎士の人の表情はほとんど変わってないので良く分からないが多少なりとも驚いているのが分かる。
「ほんとにエルフィーナなのだな。」
「ええそうですよ。」
その言葉に少し考えこむ国王。そしてもう一つの疑問点を投げかけてきた。
「そう言えばあの姿は一体?」
「えっとお酒が飲みたかったんで、魔法を使って化けてみました。私狐なので。」
「…そういうことにしておいてやろう。」
てへっとでも効果音が付きそうな感じで私が言うと何とか納得されたようだ。というより見逃されたと言ってもいいか。それにしても勇者ね…。
「まぁいい、ちょうどおぬしに頼みたいことがあってな。」
「えっとなんでしょう。」
その言葉にキュッと背筋が硬くなる。なんせ国の王からの頼みだ。無下にできるわけがない。
「王都に学校があるのは、知っているじゃろ?」
「えぇ、まあ。」
そんなことは誰でも知っているだろう。国で最も優れた学園で貴族はほぼ全員そこに通うし、なんなら平民の人までそこに通うのだ。平民にとってはそこに通うことができれば貴族の目にかなう可能性も高くなるし、貴族同士にとっては婚約者を見つけるための社交の場になったりと大事な場所らしい。
「そこで魔法の臨時講師をしてほしいのだよ。」
「なるほど。」
魔術だと言いたかったが国王陛下は知らないということを危うく忘れるところだった。
「無論。秘伝の技を教えてほしいとかそういうのでない。むしろ心を折ってほしいのだ。」
「はぁ?」
だんだん良く分からなくなってきたぞ。
「なんでもなまじ魔法の腕がありすぎるために教師陣では止められないのだ。身分も公には学園内ではみな一緒ということだがやはり逆らえんようでの。」
「まさか。」
教師陣でさえ止められない存在。そんなの――。
「あぁ、おぬしに任せたいのはこの国の第2王子ライアン・フォン・エリダムだ。」
その言葉を聞いて私の脳がショートしかけたのは、言うまでもない。その後話を煮詰めたのちに王城を後にして気が付いた。あっやべ、領地について聞くの忘れてた。こういうところを直さないといつか痛い目見そうな気がする。
氷使いの狐巫女さん 七草 みらい @kensuke1017
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