恥ずかしき青春
@EmeraldAU
パンクバンド
高校2年のある日。突然、クラスの友達N子が学校に来なくなった。
最後に更新されたブログには、表面だけのものや思いはもういりません、本物しか信じません、と。そして、こんなはずじゃなかったと愚痴ばかり言う人に対して、それはあなた自身です、レールから脱線出来なかった、あなたの責任です、そんな人たちとは関わりません、と。
そのまま、数か月N子を教室で見ることはなかった。
N子の心の内は聞いていたし、私は“偽物”ではないと思う反面、レールから脱線しきれていない自分をカッコ悪い、と思った。
今考えると、親なのか、先生なのか、他人の敷いたレールを走る、走れることはすごいことだと思う。レールが壊れずにそこに続いている環境だけでも、当たり前ではない上に、そのレールを走る能力が備わっているのだ。問題は、他の選択肢を何も考えずに、当たり前に目の前にあるレールを走っていること、それだけではないか。他のレールも考えた上で、目の前に敷かれたレールを走っているのであれば、わざわざ脱線する必要もない。突然の大地震や洪水、燃料不足によって走れなくなった時に、どうするか。大地震が起きて、休憩している間に次の行き先を考えたっていい。引き返したっていいし、燃料不足が解消するまでレールの傍に咲く花を眺めていてもいい。どこに向かうのか、どのレールを選ぶのか、それを自分で考えて決めていれば、それでいい。
高校を休んでパンクバンドを始めたN子。やはり高校は卒業すると言って、ぎりぎりの出席日数で、一緒に卒業した。卒業式の前日、何故か私は家に帰らず、一人暮らしを始めていたN子の家で、卵かけご飯を食べた。
今は地元で薬剤師として働いている。高校卒業後、どんなレールで今に至るのか、今もパンクバンドを続けているかは知らない。
恥ずかしき青春 @EmeraldAU
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。恥ずかしき青春の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます