第23話 エピローグ

「陛下。即位式は喪が開けた後、2年後になりますが、とりあえず ダイタロス3世としてよろしくお願いいたします」


「うむ、引き続き宰相としてよろしく頼む。ローデンブルク公爵」


「はい、畏まりました」



 皇宮本宮殿、玉座の間。玉座に座るのは、新皇帝ダイタロス3世。喪中なので、正式には即位していないが。短い金髪の髪に白い肌に青い目の優しそうな皇帝。



 さらに選択した、皇帝名はダイタロス。今まで2人いるが、いずれも民衆からの評判は良くなかった。1人目は、シルキリア創成期、領土を拡大するために戦い続けた、残虐王。別に悪逆非道に人を殺しまわったというわけではなく。征服した国や、降伏した王族を容赦なく処刑したから、この名前がついたのだ。



 そして、もう1人は無能帝と呼ばれたダイタロス2世。僕は無能とは思わないのだが、その治世に1度の戦争も起こさなかった皇帝。さらに、特別な政策も行わなかったので、歴史家泣かせの皇帝だったそうだ。





「で、わたしは、父上ほど、政治も軍事も良く知らん。勉強も兼ねてだが、十公会議に出させて欲しい」


「えっ」


「駄目か?」


「いえ、畏まりました。次回より陛下に出て頂きます」



 隣にいるお父様の顔を見ると、少し嬉しそうだ。





 世間一般の噂では、大公が皇帝を、皇帝が大公を暗殺しようとお互い刺客を放った。そして、先に皇帝が死んだので、ダークネス達は撤退したと。考えてみればお互い何の利点もないので、そんなこと起こるわけがないのだが。



 そして、僕は一応皇帝陛下の命を守れなかったため、謹慎処分中なのだが、新皇帝陛下に謁見するというお父様に着いてきた。




「こたびの一件、申し訳ありませんでした」


「なぜ、マクシミリアン卿が謝る? 卿が駆けつけた時には、すでに殺されていたという話だったぞ。そうだな、ローデンブルク公爵」


「はい、そうです」


「いえ、わたしがもう少しダークネスについて調べていれば」


「我々は神ではない。それは不可能だろ? まして、狂人の考える事などわかるまい」


「はい」


「それに処分は受けたのだろ?」


「はい、謹慎処分と統帥局長の解任です。誰かが処分を受けないといけない。しかし、我々は帝都におらず、陛下の警護は皆、殺されましたので、致し方なく、マクシミリアンに」


「そうか、それでその後は?」


「1年ほど謹慎して、その後は東方方面軍司令長官にでもと」


「なるほど。で、東方方面軍司令長官は、1年後には入れ換えないといけないのか?」


「いえ、そういうわけでは、ありません」


「そうか、そう言えば、皇帝即位式に使う聖衣はどうなっている?」



 皇帝即位式に使う聖衣とは、比較的新しい国のシルキリア帝国が箔をつけるために、フローレシア聖帝国の聖帝から、聖衣を授与されるという儀式である。





「それは、しかるべき人間に取りに行かせようと、外務卿と、相談中でした」


「それならば、マクシミリアン卿。聖衣取りに行ってきて。ゆっくりで、いいよ。そうだな1年半くらい。新婚旅行していないでしょ?」


「えっ、僕がですか?」


「うん、頼むよ」


「はい、畏まりました。では、行ってまいります」


「うん、よろしく。帰ってきたら大変になるからさ」


「はい」



 陛下の即位式が終わって準備が出来たら、避けられない戦いが始まる。脅されていたとはいえ、ヴァルド王国の筆頭騎士が、シルキリア皇帝を殺害して、さらに、今ヴァルド王国は、クレストを匿っている。それゆえ、シルキリア帝国は、ヴァルド王国に落とし前をつけないといけない。



 別名、落とし前戦争だ。



「マクシミリアン卿、わたしは思うのだよ。父上は、頭が良すぎたのだと、わたしは、父上ほど頭良くないし、騎士の力もない。皇帝一族の直系嫡男として生まれただけなんだ。だけど、父上みたいに、すべてを諦めたくないんだ。だから、帰ってきたらいろいろ力を貸して欲しい」





 夢らしいものが、出来たかもしれない。目の前にいる、この弱々しいが、芯の強い皇帝を支えて帝国の繁栄を築こうと。


「はい、畏まりました」





 が、とりあえずは、旅の準備だ。



 帝国歴351年9月11日第3章終了

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騎士の国のマキシ 刃口呑龍(はぐちどんりゅう) @guti3

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