第22話 大公巡行 剣聖vs漆黒の天剣
「久しぶりです。マックスさん。いや、マキシさんですか?」
「お久しぶりです。マクシミリアン=フォン=ローデンブルクです。どちらで呼んで頂いても良いですよ」
「そうですか。では、帝国筆頭騎士のマキシさん、最後の勝負をしましょう」
「クレスト様。どういうことですか?」
「ええと、彼はマクシミリアン=フォン=ローデンブルクさんです。それ以上でも、それ以下でもありません。彼は、マックス=フォン=ローデンブルクであり、マキシ=フォルスト=ホルスでもあるのです」
「意味がわかりません」
「まあ、後でゆっくりと」
「そうですね。では最初から本気で、いきますよ」
「こちらも、そうさせて頂きます」
「養魔剣神流奥義神界!」
剣聖クレストの身体能力が、魔力の供給を受け、極限まで高まる。全身が薄い光に包まれる。
僕も、体中に力をこめる。全身に力がみなぎる。
僕は、全力でクレストに向かう。クレストも僕に向かって飛ぶ。中央で激しくぶつかり合う。
スピードでは互角。俊敏性で僕が、パワーではクレストが上回っているようだ。激しいぶつかり合いの中で、攻防が繰り広げられていく。
僕が繰り出す左右の連撃を、クレストは卓越した技で弾くと。今度は、クレストが、目にもとまらぬ連続攻撃を繰り出してきた。一撃を受け止めてみたが、手がしびれるので、後は、全て避けきってみせた。
俊敏性で上まわる僕は、手数を増やし、攻撃回数を増やす。すると、クレストは、一撃、一撃を正確に重い攻撃を叩き込む。さらに、お互いに、フェイントや、投げ技、当て身も使っていく。
このままじゃ、永久に決着つかない。先に焦れたのは、僕だった。
「陽炎乱舞!」
僕は16体に分身して、剣聖クレストに迫る。しかし、
「その技は、アランさんに見せてもらいましたよ。では、陽炎乱舞!」
クレストは、12体の分身体を繰り出してきた。あちこちで、攻防戦が起こり。分身同士の戦いが起こる。そして、数で上回った僕の4体の分身体が、クレストに迫るが、
「養魔剣神流奥義魔界」
クレストが、再び分身体を作り出す。僕の分身体の動きが一瞬止まる。すると、クレストの剣が一閃される。僕の分身体は消えた。
「ただの魔法で作った幻影のようなものなのですがね」
「そうなんですか」
僕とクレストは再び対峙する。漆黒の神剣と、金色の神剣が構えられる。
エレナさんだったら、魔力尽きているだろうが、剣聖クレストはまだまだ、平気なようだ。全身を淡い光が包み輝いている。
こうなったら、持久戦だが、体力でもクレストが上回っているだろう。長期戦で不利なのは僕だ。体力ももっとつけないとな。さて、
僕は、力を攻撃に特化させ、ある程度防御を捨てることにした。そして、全力で、剣聖クレストに向かって飛ぶ。
「キッーン」
甲高い音がして、攻撃が受け止まられる。僕はがむしゃらに攻撃を続けた。正面斬り、左右袈裟斬り、左右胴斬り、そして、袈裟斬りからの逆袈裟斬り。しかし、全力の攻撃を持ってしても、懐の深い剣聖クレストに手傷は、負わせるものの、致命傷にはならない。
逆に
「グッ!」
「マックスさん!」
「マックス」
「マックス先輩!」
「マックス様!」
膝をついた僕に向けて、リリアちゃんが、ビル先輩が、ジローが、ガイが、そして、ソムチャイが声をかけてきた。
「大丈夫だよ」
僕は、大きく息を吐くと立ち上がって剣を構えた。強い、やはり剣聖クレストは強い。
「さて、そろそろ決着をつけさせて、もらいましょう。行きますよ!」
剣聖クレストを覆っていた光の輝きが持っていた剣に集束される。そして、さらに、力をこめつつ、剣を斜め下に引き構えた。そして、
「養魔剣神流奥義絶界!」
クレストが構えた剣を突き出すのと同時に、剣から凄まじい威力の衝撃波の奔流が僕に向けて、放たれた。
マスターゴーラン、すみません。勝手に必殺技作ります。
「錬身流奥義麒麟!」
単純に朱雀と白虎の合わせ技。僕は16体に分身して、全力の突きを放つ。僕の全力の突きが、扇の要に集まるように集束していき、クレストの放った衝撃波と、ぶつかり合う。
光の奔流と、僕の剣の突きはぶつかり合うと、中央が光の渦になって暴れまわる。全身に凄まじい衝撃が走り、少しでも気を抜くと弾き飛ばされそうな力がかかる。僕は必死に耐えた。クレストも、剣から放たれた衝撃波を必死にコントロールしていた。
そして、弾ける。周囲にまで、光の爆発と衝撃が走りまわる。そして、僕は、クレストの衝撃波に飲み込まれる。僕の放った剣の威力も、衝撃波を突き通して、クレストに突き刺さる。
僕は、その衝撃をもろに受ける。自分の体が軋む、そして、僕は弾き飛ばされ壁に激突した。クレストにも、僕の奥義の力が到達し、内部に入り全身を切り裂いた。
マックスは、弾き飛ばされ壁に激突した後、滑って下に落ちた。
「マックスさん!」
リリアが、マックスの元に駆け寄る。ガイ、ソムチャイも走る。
クレストは、剣を支えにしていたが、立っていた。
「クレスト様の勝利!」
アレリアが、声を出す。しかし、クレストが否定する。
「いえ、引き分けです」
「えっ!」
「ゲフッ!」
クレストは、血を吐いて、膝をつく。
「アレリアさん、申し訳ありません。一歩も動けません。運んでもらえますか」
「わかりました。撤退します!」
そう言うと、クレストを魔法で浮かせて、スモークと共に消えた。
「終わったすか?」
「終わったな」
ジローと、ビルも、横たわるマックスに向かって歩き始めた。
僕は目を覚ました。目の前に髪の毛まで、よれよれのリリアちゃんが目に入る。
「リリアちゃん、大丈夫?」
「わたしは、大丈夫です。マックスさんは、大丈夫ですか?」
「僕は大丈夫だよ。あちこち痛いけど」
「良かった」
「で、僕とクレストの対決はどうなったの?」
「えーと、剣聖クレスト曰く、引き分けだそうです。世間一般的にも、引き分けってことで、話が広がっています」
「そうなんだ 。剣聖クレストと、もう一度戦いたかったな」
「なぜですか? また機会は、ありますよ」
「うん、そうだね」
いや、その機会は、もうない。僕は試合には、実質負けた。そして、勝負には勝ってしまったのだ。不幸なことに。あ~あ、戦場で戦いたかったな。
「で、大公巡行の方は大丈夫だったの?」
「そっちは、大公様や、お義父様は大丈夫でした。ですが」
「ですが、何?」
「パウロスさん、ビクターさん、ポルビッチさんが亡くなり、リグルドさん、パナさんエピジュメルさんが怪我を負ったそうです」
「そうなんだ。僕のせいだな」
「マックスさん! 何でもかんでも、自分で背負わないでください!」
「ああ、うん」
「マックスさんは、わたし達を助けるために、帝都に来て、命がけで、剣聖クレストと戦ったんです。それが全てです」
「そうだね、ありがとう。リリアちゃん」
すると、今度はばつが悪そうにローズさんが、現れる。
「ほら、お姉ちゃん」
「ああ、うん。えっと、ごめん。わたしが、馬鹿な頭で変な計画たてなければ、こんなことには、ごめんで済む話じゃないけど、本当にごめんなさい」
「ローズ先輩大丈夫ですよ。誰が剣聖クレストが暗殺者に身を落とすと思いますか?」
「でも、わたしが引き込んだわけで」
「ローズ先輩は、嵌められただけで、悪くないですからね。陛下の命が狙われていると聞いて助けに行ったって、いうことです」
「まあ、そうなんだけど」
「だから、トゥルク神聖国は復活させて、国王にはダンテ君がつくとして、ローズ先輩何をやりますか?」
「えっ、戻っていいんだったら、先生辞めて、トゥルク神聖国の剣術指南役でもやるかな?」
「良いですね。頑張って下さい」
「ああ、マックスありがとう」
僕は立ち上がった。リリアちゃんが、慌てて僕の体を支える。
さて、やらなきゃいけないことがある。死者の弔いと、そして、起こった事実の発表。そして、処分や、褒賞の発表だ。そして、誰かが処分を受けないといけない。
そして、シルキリア帝国の公式発表が行われた。シルキリア皇帝ルシタニア8世が暗殺されたこと。このため、帝国は二年間喪にふくし、新皇帝は、2年後就任する。
そして、暗殺の実行犯は剣聖クレスト。警備についていた近衛騎士団長も死亡。
事前に暗殺計画を事前に察知した、三剣のローズ=フォン=アルフォルスが防ごうと駆けつけたが、剣聖クレストに敗北。さらに、帝国筆頭騎士マクシミリアン=フォン=ローデンブルクも、駆けつけたが、勝負は引き分けたものの、暗殺を防ぐことに失敗したと。
そのため、暗殺を防げなかったものの、わざわざ陛下の命を助けるために、駆けつけてくれた。ローズ=フォン=アルフォルスの報いるために、トゥルク神聖国を復興させる。
逆に、計画を察知したものの、暗殺を防げなかった、マクシミリアン=フォン=ローデンブルクに無期限の謹慎と、統帥局長の解任が言い渡された。
この公式発表とは、別にまことしやかに、噂が流れた。今回の皇帝暗殺計画は、大公が計画したことだと。そして、大公襲撃事件は、皇帝が計画したと。そのため、皇帝が殺されると、大公襲撃犯が撤退したんだと。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます