らすと

長月瓦礫

らすと


紫煙と私怨が混じる不夜城


離縁と奇縁が眠らぬ街で


タバコの灰をかぶった姫様




どうかお願い 王子に会いたい


ガラスの靴をはいたら最後


旅立つ最後にこう告げた



「鐘が鳴ったら魔法は解ける」



そんなの知ってる分かってる


恐れ知らずの少女は言った



「どこにも私の居場所がないの」



家は危険な場所だった


魂削る 最悪な場所


銀の靴は錆びてしまった


帰りたくても帰れない




夜の町は怖くなかった


夜の人は恐くなかった




時計の鐘は鳴りひびく


誰がために鐘は鳴るのか


無知で無色な姫君に鳴る




恐怖を知らない姫君のため


毎日響き 時間を告げる


今日も響いた 時間の鐘


境を告げる鐘は響いた



だがしかし 鐘をかき消す少女の悲鳴


廃れ朽ち果て ガラスの靴


ひび割れ砕かれ 打ち捨てられても


名もなき少女は あきらめなかった




ガラスの靴は消えてしまった


夜の魔法も解けてしまった 


あきらめたくない あきらめたくない


自分の居場所 自分の相手 唯一無二の存在感




「キミ、可愛いね」




声を聴いた 手をとった


自分よりも 大きい手のひら


ひとりぼっちは もうひとりいた




綺麗な王子は ただのマボロシ


オモチャを探す 悪魔の見せかけ


ガラスの靴は 赤く染まった


赤い世界で踊り続ける ENMA DANCE




手のひらの上で 踊り狂う


赤く色づく 悪魔の手のひら


罪の権化であるとも知らずに


蝶のように 舞い踊る


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らすと 長月瓦礫 @debrisbottle00

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