第3話 立花楓は死神の猫を信じない 2

 汐莉の死は楓にとって受け入れ難いものだった。ましてや楓と別れた直後に殺されたとあっては……。


 楓が目覚めると刑事達は既に帰っていて、彼女はベッドに横たえられていた。


 母に状況を聞く楓。母は躊躇いながらも刑事から聞いた事をボソボソと話してくれた。


 刑事によると汐莉は楓と別れた後、自分の家の近所で銃殺されされており、たまたま通りかかった近所の人によって発見されたそうだ。


 今日は楓の精神状態を鑑みて話を聞くことは諦めたらしく、刑事は後日改めて話を聞きに来るとのこと。


 数時間前まで仲良く話していた後輩の死、しかも自分と別れた直後に殺された。


 楓の頭の中には大きな声でさようならを言いながら大袈裟に手を振っている汐莉の姿が何度も浮かんでは消えていく。


 再び胸の奥が痛みだし泣きじゃくる楓。


「汐莉……しおりぃ……」


 母はそんな楓をなにも言わず抱き締める。楓が落ち着くまでずっと。


 半ば過呼吸の様な状態になりながらも、涙が収まり始めた頃、楓はふと思い出す。


(そういえば汐莉と別れた後の鈴の音……。あれはまさか本当に死神が化けた猫だったって言うの?)


 そんな筈は無いと思いながらも、汐莉の死は別れの直前に語った噂と状況が一致しているように思えてならない楓。


(あの時鈴の音を追っていれば汐莉を助けられたのかも知れない……)


 そう思うと楓の心には悲しみの次に大きな後悔の念が押し寄せて来るのだった。


 今さら考えても汐莉は戻って来ない。それは分かっていながらも、楓はたられば・・・・を考えずにはいられなかった。結局、彼女は一睡もせずに夜を明かしたのであった。




 

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にゃあと鳴く死神と永久の銃弾 岩野こま @iwanokoma

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