第11話 私に出来ること。
「ホームルームを代わって頂きありがとうございました」
「任せてください! 秋田先生のためならたとえ火の中水の中! 教育委員会や保護者とだって喧嘩してやりますよ!」
「それはちょっと……」
そこそこ付き合いのある保険医に笑われながら手当を受けてから職員室へ戻ると、すでに宮尾先生によってホームルームは恙なく終えられていた。
名簿を返して頂き出席状態を確認してみれば、なるほど。
「秋田先生が戻られる前に確認してみたんですが、休みの連絡はこちらにも入っていないようです」
欠席扱いとなっている女生徒が居た。
遅刻ではなく。
「そうですか。まあ、高校生にもなってこちらから執拗に連絡を取るわけにもいきませんしね」
「その辺の線引きが年々難しくなっていきますよね……」
「時代の流れというものなのでしょう」
生徒が休むというのであれば学校側としては事情は把握しておきたいが、すぐに自宅へ連絡を取れば正解というものでもない。保護者から問題視された話を何度も耳にした。もっとも、生徒の事情は把握していなければいないで後で問題が発生した際に叩かれるのだが。
「宮尾先生は一限が三組でしたね。引き継ぎはもう大丈夫ですので、ご自身のクラスへ向かってください」
「はい! 分っかりました!!」
昨日急に叫びだしたのは彼女だ。
途中で話の内容にズレがあったと記憶している。のであれば、理由は定かではないが、なにか私が許せない事柄を言ってしまったのだろう。おそらく叫んだ内容の大半は私に向かって叫ばれていない。
その上で、彼女が今日来ないというのであれば。
ただの教師でしかない私に何が出来るというのだろうか。
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